No. 847. イトトンボたちの活動.2022.6.12.

今日は,ムスジイトトンボの日周活動をちょっと気合いを入れて調査しました.これについては別途まとめたいと考えています.ここでは,その他のイトトンボたちの活動と,ムスジイトトンボのメスを記録しておくことにします.ムスジイトトンボのメスは,他のイトトンボのメスにはないエキゾチックな色彩をしており,私の好みだからです.まずはアオモンイトトンボからです.


▲8:54.午前はアオモンイトトンボの交尾の時間だ.▲

最近はアオモンイトトンボの観察にも場所を選ぶ必要が出てくるくらい,たくさんいるところが減ってきました.この池はアプローチがしやすく,写真撮影には向いています.上の写真のオスは水色をしていますが,別の若いオスは薄緑色をしています.周辺の草地にはこの色をしたオスが,摂食などの活動していました.メスの体色変化についてはよく語られますが,オスの違いについてはあまり語られないようです.この薄緑と水色は,多型現象なのでしょうか,それとも成熟による変化なのでしょうか.


▲胸部の淡色部が薄緑色をしているやや若いアオモンイトトンボのオス.▲

アオモンイトトンボの産卵時刻は午後です.午後になると単独で産卵する姿が見られますが,オスが近づくと腹部を下に曲げ,交尾拒否をします.今日はオスと同色型のメスも産卵していました.そういえば,この同色型のメスにも,写真のような水色タイプと薄緑のタイプがあります.

▲アオモンイトトンボ同色型メスの産卵.▲


▲普通のアオモンイトトンボのメスの産卵.▲

近くでアジアイトトンボも産卵をしていました.アジアイトトンボとアオモンイトトンボのメスは非常によく似ていて,いつも同定に迷ってしまいます.特にこの時期のアジアイトトンボは前肩あたりにオレンジの筋が出るのでアオモンイトトンボとそっくりです.夏頃の個体ではこのオレンジの筋はあまりはっきりしません.慎重に同定する必要がありますね.


▲アジアイトトンボの産卵.この2枚は同じ個体である.▲

次はクロイトトンボです.クロイトトンボも最近は減少傾向が見られます.でもたいがい他のクロイトトンボ属と一緒に見られるので,どうしてもそちらに気をとられ,観察がおろそかになります.この池はどちらかといえば平地池なので,クロイトトンボは数が少なく,産卵活動を見ることはありませんでした.


▲クロイトトンボの交尾.他のオスがやたらと干渉している.▲


▲このカップル,交尾がうまくいかないようで,すぐに外れてしまう.▲


▲ムスジイトトンボの移精行動にも干渉するクロイトトンボのオス.▲

最後は主役のムスジイトトンボのメスたちです.今日のムスジイトトンボのメスは,すべて成熟した色彩をしていました.ここの個体群全体が一つの成熟期を迎えているようなかんじです.ただ,今日羽化している個体も見ました.


▲羽化直後のテネラルなムスジイトトンボのメス.▲

過去3回の観察に比べて,今日は草むらでくつろぐメスが多く目につきました.草の緑の中にオレンジの胸部とコバルト色の腹部のコントラストが,やはり他のトンボには見られない色調をしています.


▲草むらで憩うムスジイトトンボの成熟メスたち.▲

池面では,やはり数多くいる他のオスにすぐに見つかってしまうようで,大概がタンデムか交尾態です.ここの生息地ではほとんど例外なく潜水産卵するので,産卵中のペアには滅多にお目にかかれません.


▲交尾中のメスは腹部の腹面が上を向くので,コバルト色がよく目立つ.▲

池の中ではあまり単独メスには出会いませんが,潜水産卵を終えた後のような,若干翅が曇って疲れたような様子のメスを見ました.


▲池の中で見た,珍しく単独でいるムスジイトトンボのメス.潜水産卵の後か?.▲

潜水産卵は遠くの方で1ペアを発見しました.またかわいそうにアメンボにやられたオスを見ました.写真にはなりませんでしたが,ウチワヤンマやギンヤンマもムスジイトトンボを狩っているようです.


▲ヒルムシロ類の葉柄に産卵しつつ潜水するムスジイトトンボ.矢印は水面下のメス.▲


▲止まっているときにやられたのだろうか,アメンボの餌食になったオス.▲


今日はイトトンボばかりの登場でした.最後にその他のトンボの記録をしておきます.今日はコフキトンボの産卵を見ました.そしてウチワヤンマの羽化殻がいっぱい付いていました.


▲ムスジイトトンボの羽化殻と,コフキトンボの成熟オス.▲


▲コフキトンボの産卵.やはり水面下の茎に卵を貼り付けている.▲


▲久しぶりにウチワヤンマの羽化殻の「群れ」に出会った.▲

というところで,今日は終わりです.

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