No. 842. ムスジイトトンボの観察.2022.6.2.

なかなか数多くの個体が集合している場面に出くわさないムスジイトトンボ,今年はこのチャンスに巡り会えたので,記録をとるためにここはひと頑張りの必要があります.ムスジイトトンボがたくさん集まっている場面に出会ったのは,兵庫県内では実に21年ぶりです.このときはルートセンサスで数を数えたのですが,115頭いたと記録に残っています.おそらくこの池にも全体では100頭を越えるくらいはいると思われます.ムスジイトトンボは決して珍しいイトトンボではありません.あちこちで偶然2,3頭の姿を見ることは結構あります.しかし生態を知るにはやはりたくさんいる場面で観察することが重要です.

先日のロケハンで,それなりの数がいることはわかっていましたので,今日はメスを探すことと,繁殖活動を観察することが目的です.ムスジイトトンボの繁殖活動については,私はまだ十分理解していないところがありますので,楽しみです.池には10:00過ぎに入りました.まだオスの姿すらぽちぽちで,移動性の高いこのトンボ,まさかいなくなったわけではあるまいと思いながら,時間が経つのを待ちました.空は快晴,申し分ありません.


▲はじめ少なかったオスたちだが,午前中だんだんと数が増えてきた.▲

そのうち,だんだんとオスたちが水面を飛び始めました.しかし,タンデム状態のペアなどは全く姿を見せません.そもそもメスの姿が見えないのです.今日はメスを探すのも目的の一つですので,変化のない水面はしばらく放っておいて,もっぱら草むらを探し回りました.なかなか見つかりませんが,今日は後には引けません.しばらくして,やっと,1頭のメスが摂食している姿を見つけました.もう11:30を過ぎているのですが,まだメスは摂食しているようです.もっともこのメスまだ若く完全成熟していない感じです.胸部が橙色ではなく黄緑色です.しかし腹部側面にはコバルト色が出ています.こういう感じのメスは初めて見ました.


▲やっと見つけたメス.まだ胸部が橙色になっていなくて黄緑だ.▲

成熟したメスはまったく見つかりません.これはどうやら繁殖活動が始まるのが午後になりそうだと思い,昼食をとることにしました.いったん池を離れてラーメンでも食べに行くことにしました.その途中,池を出たところで,もっと未熟なメスに出会いました.


▲まだコバルト色が出ていなくて,複眼に茶色が残っている.▲

昼食から帰ってきたのが13:30ごろ,池に入りますと,足下を高速でタンデム状態のペアが飛びました.やはり午後だったようです.こうなったら,目を凝らしてタンデム状態のペアを探すことになります.そのとき,メスを見つけました.なんと,タンデムのオスの頭部と胸部が何者かに食いちぎられ,腹部だけがメスの前胸をつかんでいるという,ちょっぴりかわいそうなメスでした.


▲角!をつけたムスジイトトンボのメス.▲

こんなメスではありましたが,やっと,成熟した胸部が橙色のメスに出会うことができました.ただ,まだ「生きた」タンデムのペアは見つかりません.ムスジイトトンボ君は,なかなか出し惜しみするみたいですな.14:03,やっとのことで,タンデムになっているペアを発見することができました.


▲タンデムのペアをやっとの事で見つけた.▲

このペア,産卵行動に移るかどうか期待しましたが,交尾に入りました.交尾は延々と続いています.


▲産卵せずにまずは交尾から…という感じ.▲

実は今日は夕方から所用があって,この交尾が終わるのを待つことができません.遅くてもここを14:30には出ないと,間に合わないのです.繁殖活動は午前中かと思っていましたが,これは誤算でした.そこで明日またチャレンジすることを決め,今日はここで引き上げることにしました.

ムスジイトトンボのタンデム態を探し回る間,いろいろなイトトンボ類の活動に出会いました.最後にそれを紹介しておきます.まずはアオモンイトトンボ.最近はアオモンイトトンボをわざわざ見に行くことが多かったのですが,ここでは,ついでに見ることができました.


▲アオモンイトトンボは午前中が交尾の時間.メスを探す合間に発見.▲


▲アオモンイトトンボの未熟なオレンジ色のメス.▲


▲オレンジ色から鶯色へと変化しつつあるメス.▲


▲午後には,複数の個体が産卵を行っていた.▲

次はアジアイトトンボ.アジアイトトンボはここでも個体数は少なかったです.アジアイトトンボが群れているところが意外と見つかりません.


▲アジアイトトンボのオス.アオモンイトトンボに混じって少数が見られた.▲


▲アジアイトトンボの産卵.この個体はまだうっすらとオレンジ色が残っている.▲

そのほかには,クロイトトンボがいました.それとウチワヤンマの羽化殻があちこちに浮かんでいました.


▲クロイトトンボのオス.ムスジイトトンボに混じって活動していた.▲


▲ウチワヤンマの羽化殻.本当にウチワヤンマは早く出てくるようになった.▲

今日はイトトンボばかりの特集になりました.あすもまたムスジイトトンボ一色のブログになりそうです.(明日に続く).

カテゴリー: 兵庫県のトンボ, 観察記 パーマリンク