神戸のトンボたち
K080. ハネビロトンボ Tramea virginia
メスの標本写真.1991.9.10.,神戸市須磨区産.
メスの標本写真.1991.9.10.,神戸市須磨区産.
 ハネビロトンボは神戸市では越冬できず,記録はおそらくすべて南方から飛来したものを採集したものです.九州の中南部では越冬が可能といわれています.
 神戸への飛来記録については松本氏(1982)が詳しく述べていますが,氏は1969年から1971年にかけての夏に数多く観察しています.そのときは水田の上で縄張りを張っていたといいます.また2000年前後には六甲アイランドへの飛来が毎年のように報告されました.須磨区では学校プールの上を飛んでいる個体を見たことがあります.
 神戸市近郊では,秋に青野が原で羽化殻を含め,若い個体が採集されていて,一時的定着をうかがわせる記録があります.メスの記録は珍しく,多井畑で筆者が採集した個体(写真)は,その若さからみて,おそらく一時的にどこかで世代を繰り返したものであろうと思われます.
 産卵行動については六甲アイランドで観察されたことがありますが,羽化,幼虫などの記録は神戸ではありません.今後も各地で時々記録されていくものと思われます.