神戸のトンボたち
K047. フタスジサナエ Trigomphus interruptus
若いメス.2023.5.11.,神戸市北区.
若いメス.2023.5.11.,神戸市北区.
 神戸市では各地に記録があり,春に普通に産するサナエトンボといえますが,最近は数が減ってきています.六甲山地の高標高地からは記録がないようなので,基本的には平地,丘陵地,低山地に生息する種といえそうです.
 環境としては田園地帯のため池がその中心となるようですが,他に,湿原でも成虫が見られます.また淡河川で羽化殻が1個採集されていますが,これは,どこからか流れてきたものと思われます.幼虫は,ため池の岸近くの泥の中に潜んでおり,落葉のたい積している下の泥などに隠れています.
 フタスジサナエは春一番に羽化するトンボの1つです.北区の10×5m程度の小さな池では,4月21日の暖かい日に羽化殻(ぬけがらのこと)を合計68個を採集したことがあります.これでもまだ全部採りきっていないことは確実で,100個はあると思われました.この日は朝から快晴で気温も高く羽化には絶好の日よりで,ここに到着したのは14時30分ころでしたから,この日の午前中にほとんど羽化したのではないかと思われます.羽化殻は水面に浮かぶものがたくさんあり,他のものは水面から出ている植物の茎に垂直に,また水面に広がる葉や岸の泥の上で見つかりました.羽化途中の幼虫も1頭観察しました.
 また西区の池では1日で数百のオーダーで羽化殻が採集された記録もあります.とにかく数の多かったサナエトンボですが,他のトンボの例にもれず1980年代からの20年間で激減しました.その後,2023年にかつて数が多く見られた北区の産地へ出かけました.段々畑の一番高いところにあったため池群で生き残っているのを確認しました.