■見分けのチェックポイント
羽化殻全長20mm程度.全体的に円くぽっちゃりした感じの羽化殻である.側棘は第8,9腹節にあり,第9腹節の側棘が第9腹節長とほぼ同じ程度の長さがある.背棘は第3−8腹節にあって明瞭で,後ろのものほど先が後方に曲がる.第2腹節に痕跡的な背棘がある個体がある(矢印).石田(1996)では,第2または3−8腹節に背棘があると書かれており,その図版では第2腹節に小さな背棘が描かれている.肛上片先端部は肛側片先端部より少し基部よりに位置し,尾毛先端部は肛側片先端部の1/2を少し越えるところに位置する.側刺毛は7本程度,腮刺毛は杉村ら(1999)によると13−14本程度であるという.図版は亜終齢幼虫の前下唇で,腮刺毛は12本となっている.
■分布と類似種
久米島,宮古島,石垣島,西表島,波照間島,南北大東島,小笠原諸島の父島,向島の各離島に記録がある.外観の印象から比較的わかりやすい幼虫/羽化殻である.明瞭な背棘が第3−8腹節にのみ存在するトンボ科は,ヨツボシトンボ,カオジロトンボ,エゾアカネ,アオビタイトンボの4種だけである.前3種は北方系の種であり分布域が大きく離れている.アオビタイトンボは分布域が広く重なっているが,これには側刺毛が11本程度あることによって区別できる.
■生態
成虫は海岸近くの池に多く見つかっている.南大東島では,特に水域が広がっているわけでもない海岸の斜面に,多くの個体が,海の方に向かって枝や草の先に風見鶏のように止まっていたのを観察した.近くの水域では幼虫は全く採集されなかった.石垣島では羽化殻が取れているが,本当に定着しているかどうかまだ確定的なことはいえないという(杉村ら,1999).