デジタルトンボ図鑑−羽化殻編
ヤンマ上科/サナエトンボ科/オジロサナエ属 検索表
 オジロサナエ属4種の分布域は,九州の大隅半島でオジロサナエとチビサナエの分布が隣接していることがあるものの,現在基本的に重なりがない.したがって,通常の同定においては,属が確定すれば種も確定する.しかし,過去に分布しないとされる地域での発見や,分布域内でも形態や大きさが他と異なると感じられる個体が取れたときには,慎重に同定作業を行う必要がある.可能であれば,羽化まで飼育して確認することを考える必要があろう.
 なお亜種関係にあるチビサナエとオキナワオジロサナエについては,形態的に区別するのが困難である.
検索キー01
01.触角の外縁が直線的で(a:赤矢印),基部に近い外縁部分は角張るようにカーブする(a:青矢印).その結果触角全体が角ばって多角形に見える.羽化殻体長は18mm前後またはそれ以上.・・・02
− 触角の外縁部が円みを帯びており(b:赤矢印),基部に近い外縁部も円くカーブする(b:青矢印).その結果触角全体も円みを帯びて見える.羽化殻体長は15mm前後.・・・03
  a.オジロサナエの触角,b.オキナワオジロサナエの触角.
検索キー02
02.羽化殻全長は18mm前後で,ワタナベオジロサナエよりややずんぐりしている.ワタナベオジロサナエと比較して,肛錐の長さは幅に対してやや長く(石田,1996),その比は0.6前後である.青森県を除く本州,四国,九州の各府県に分布する.ただ鹿児島県大隅半島南部には分布せず,そこにはチビサナエが分布する.・・・オジロサナエ
− 羽化殻全長は20mm前後で,オジロサナエよりやや細長い.オジロサナエと比較して肛錐の長さは幅に対してやや短く(石田,1996),その比は0.5前後である.石垣島と西表島にのみ分布する.・・・ワタナベオジロサナエ
var. オジロサナエにも全長20mmを超えるものが存在するので,これは参考程度にした方がよい.肛錐の比については,検討した標本数が少なく,やや確実性に欠けるが,手元のワタナベオジロサナエ3体の標本については成立している.九州南部におけるオジロサナエ属の同定においては,チビサナエの可能性を念頭に置いて行う必要がある.チビサナエは宮崎県に記録がある(津田,2000)が,現在は見つかっていないようである(尾園ら,2012).
a.オジロサナエ全形,b.ワタナベオジロサナエ全形,c.オジロサナエの肛錐,d.ワタナベオジロサナエの肛錐.
検索キー03
03.九州大隅半島南部,種子島,屋久島,奄美大島,徳之島に分布する.・・・チビサナエ
− 沖縄本島,阿嘉島に分布する.津田(2000)には,渡嘉敷島にも分布するとある.・・・オキナワオジロサナエ
var. この2亜種については,形態的に区別できそうな相違点が見いだせなかったので,分布域によって判断するしかないであろう.成虫には若干の相違点があり区別できるので,正確な同定結果を必要とするならば,羽化させて確認すべきである.チビサナエは宮崎県にも記録がある(津田,2000)が,現在は見つかっていないようである(尾園ら,2012).