グンバイトンボ属 Platycnemisとモノサシトンボ属 Pseudocoperaの区別
以上から,同定上注意しなければならないことは,対馬では基本的にチョウセングンバイトンボとし,グンバイトンボやモノサシトンボではないことをしばらくの間は確認する必要があること,アマゴイルリトンボやオオモノサシトンボが分布しない地域ではグンバイトンボとモノサシトンボの区別,これらが分布する地域では,これらを加えた区別ということになる.これらの地域では次の手順で判定するとよい.
- 対馬での記録.♂♀とも腹部第10節が黒色.後頭条が左右でつながらない.
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・チョウセングンバイトンボ
対馬以外の記録.または対馬で上記の形質が当てはまらない・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2. - 前胸に突起がある(図1グンバイトンボ(2)参照)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3.
前胸に突起はない(図1モノサシトンボ(2)参照)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4. - 後頭条がある(図1グンバイトンボ(1)参照)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・グンバイトンボ
後頭条がない・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・アマゴイルリトンボ - ♂の腹部第9,10節は全体が水色または淡緑色
♀の腹部第10節は全体が水色または淡緑色・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・モノサシトンボ
♂の腹部第9節は背面が黒色,♀の腹部第10節の背面が黒色・・オオモノサシトンボ

図1.グンバイトンボとモノサシトンボの区別点.
グンバイトンボとモノサシトンボは,後頭部の斑紋で区別するのがいちばんよい.これは♂♀にかかわらず利用できる形質である.(1)グンバイトンボには後頭条があるがモノサシトンボにはそれがなく,水色の斑紋が複眼内側と正中線近くにそれぞれ1対ずつある.(2)またグンバイトンボとアマゴイルリトンボには前胸に突起があるがモノサシトンボを含むモノサシトンボ属にはそれがない.したがってこれはアマゴイルリトンボとモノサシトンボの区別としても使える.なおアマゴイルリトンボにはグンバイトンボにあるような後頭条はない.チョウセングンバイトンボについては,現在のところこの前胸の突起について確認が取れていないので,存在するかもしれないが,区別点としては使わないでいただきたい.この種は種の保存法の緊急指定種なので採集はできず,また報告を待ちたい.
尾園暁・二橋亮・境良朗・日下部満,2022.日本初記録のチョウセングンバイトンボを対馬で発見.月刊むし (613):2-7.