No. 967. 信越地方へのトンボ観察行.2024.6.5-8.

梅雨入りの前に,信越地方へ,トンボ観察に行きました.見たいトンボはオオトラフトンボです.もともと幼虫(ヤゴ)に興味があったため,日本産トンボ幼虫については,だいたい出会ったり生きた状態のを見たことがあるのですが,成虫については,自然の中を飛ぶのを見ていない種類がそこそこあるのです.オオトラフトンボもその一つです.

まず一日目は,昨年アマゴイルリトンボを観察した場所へ行くことにしました.そこには遠くを飛ぶ不均翅類のトンボがいて,種類がはっきりしなかったのですが,写真に撮って解析したら,どうもオオトラフトンボのように見えたのです.そこで今年はまずそれを確認に行きました.結論から言うと,いました.一日目は午後到着で気温が18℃とやや低かったこともあり,水面を飛ぶトンボはほとんどいませんでした.一方草の間には,アマゴイルリトンボの未熟な個体がたくさん群れていました.羽化期のようです.


▲草間に群れるアマゴイルリトンボの未熟個体.▲


▲アマゴイルリトンボの羽化殻.まだ羽化期が続いているのだ.▲

二日目,朝は青空,予報は昼から曇り,まあまあの感じです.朝8時過ぎに池に着いたとき,まだ水面を飛ぶトンボはいませんでした.しかし日向にはコサナエたちが止まっていました.と,突然足下で,コサナエが産卵を始めました.


▲産卵に来たコサナエ.淡色部がまだ黄色く若いのだろうか.▲

写真でおわかりのように,写真撮影には理想的な場所です.背の低いシダ植物の上で産卵をし,背景は空が反射する水面です.こういう位置ではオートフォーカスがよく効くのです.案の定数十枚の写真のほとんどはフォーカスが来ていました.なんか,ステージの上で産卵のショウを見せてくれているようです.


▲産卵をするコサナエ.▲


▲オスはあちこちに止まっている.▲

さて,本命はオオトラフトンボです.実は一日目ロケハンをしているときに,オオトラフトンボの羽化殻を見つけました.なんと水際から1mくらい離れた小径の,池とは反対側に生えている草に付いていました.一日目は不均翅類のトンボの姿がほとんどなかったのでちょっと心配はあったのですが,これでこの池にいることは間違いないということが確認できました.


▲オオトラフトンボの羽化殻.これはオス.▲

ただこんなものが着いているということは,まだ繁殖活動には早いのかと,別の心配が出てきました.羽化殻は二日目も見つかり,全部で6個体採取できました.


▲オオトラフトンボの羽化殻.これはメス.▲

さて,コサナエの産卵を見たあと,産卵に敵した場所,つまり水中に卵を絡めやすい沈積物のある場所で,待つことにしました.ここは一日目に羽化殻を見つけた場所でもあります.そうこうするうちに池の中央を飛ぶトンボが現れました.あまりに遠くて種類がよく分かりません.クロスジギンヤンマにしては小さいし,トラフトンボにしては大きいというサイズです.このトンボ,ほとんど岸に近寄らず,中央ばかりを飛んでいます.しかも私が近づくと,その反対側に寄って飛びます.見えているのですかね?


▲池の中央部を飛ぶばかりの謎のトンボ.囲みは腹面からのアングル.▲

撮った写真をホテルで確認すると,どうやらオオトラフトンボです.オオトラフトンボは池の中央を飛ぶとことは図鑑等に書かれていますが,まさにその通りでした.かなり粘りましたが,岸に近づく気配はありません.これはもう産卵に来るメスしか接近遭遇できそうにないと,判断せざるを得ない状況でした.まあ,本当にトンボによってその行動パターンはさまざまです.若干の悔し紛れはありますが,これが生態観察なのですね.写真には難しい相手です.普段見ている人には当たり前の光景なのでしょうが,初めて実感したときの感情,これが遠征の「冒険心」をくすぐります.

すると,10時を過ぎたころ,突然私の目の前に黒いトンボが入り,行ったり来たりしながら打水産卵を始めました.オオトラフトンボはこんな産卵はしません.写真を撮りまくりましたが,動きが早くピントが来ません.1枚だけなんとか写っているものがあって確認すると,カラカネトンボでした.


▲産卵にやって来たカラカネトンボのメス.▲

よく見ていると,ときどき岸近くを飛ぶオスの姿も確認できました.でも速すぎて写真にはなりませんでした.ということでしばらくしてから,地元では見られないイトトンボ類の確認をすることにしました.


▲エゾイトトンボ.メスには青色型と黄緑色型がある.▲

まずはエゾイトトンボです.エゾイトトンボは信越地方では極めて普通種のようです.私には北の方にやって来たと実感させられるトンボなのですが...アマゴイルリトンボがまだ羽化期が続いている状況の中で,エゾイトトンボは見た限り成熟した個体がほとんどでした.


▲オゼイトトンボ.こちらは未熟な個体や,処女飛行の個体がむしろ多かった.▲

次はオゼイトトンボです.こちらはまだ羽化期のようで,足下から処女飛行する個体をいくつか見ました.繁殖活動には少し早いようです.対してアマゴイルリトンボは,羽化期ではあるようですが,すでに成熟して産卵しているペアもいました.


▲アマゴイルリトンボの産卵.▲

それから,オオトラフトンボを待っているとき,ルリイトトンボを見ました.クロイトトンボに混じって枯れ枝の先に止まっていました.これ1頭だけしか見なかったので,この場所では数が少ないのでしょう.でもイトトンボというのは,近くでじっくり見ると,とてもきれいなトンボたちです.でもどうして北の方のイトトンボたちは水色をしたものが多いのでしょうね.


▲ルリイトトンボ.▲


▲潜水産卵を始めているクロイトトンボ.▲

クロイトトンボを初め,地元で見られるトンボたちも活動していました.写真にはありませんが,クロスジギンヤンマも元気に飛んでいました.シオヤトンボなど,兵庫県ではもう終わりといっていいですが,標高が高いせいか,まだまだ若くてきれいな個体がたくさんいました.アサヒナカワトンボも繁殖期真っ盛りの感じです.


▲標高が高いせいでしょうか,まだ若々しくきれいなシオヤトンボ.▲


▲アサヒナカワトンボも数多くいた.▲

さて,この場所は,これ以上いても進展がなさそうなので,移動して宿に入ることにしました.次の日のターゲットはオオセスジイトトンボですが,これはまだ時期が早いと地元の友人に助言を受けていましたので,観察地の様子を見る程度にしました.

三日目,観察地に着いて池の周囲を歩いて,トンボのようすを観察しました.草地の中にはアオモンイトトンボがたくさん群れていました.


▲草の間に群れるアオモンイトトンボたち.▲

と,突然目の前を,大型のイトトンボが飛びました.よく見るとオオモノサシトンボのようです.腹部第9節の背面が褐色をしています.


▲未熟なオオモノサシトンボのオス.▲

やはり遠くへ来るといろいろなトンボたちに出会えますね.これが楽しみでもあります.ただこれ1頭だけでした.これから羽化してくるのでしょうね.

さらに歩いているとアオモンイトトンボの交尾の時間帯に入ったようです.アオモンイトトンボは午前中に長時間交尾します.ですから,あちこちで交尾態が飛び回る風景に出会います.


▲交尾時間帯を迎えたアオモンイトトンボたち.▲

一通り探索をしたあと,友人に勧められた池を見に行くことにしました.こちらは平地にある池で,とても環境がよく多くのトンボが記録されていると聞いています.まず目についたのが,たくさんのヨツボシトンボ.やはりこちらはまだヨツボシトンボが盛んに活動している時期なのですね.


▲ヨツボシトンボのオス.▲

次に見たのがモノサシトンボ.こちらのモノサシトンボは淡色部がやけに白く見え,濃色部が黑っぽいので,一瞬オオモノサシトンボか? と思ったほどでした.兵庫県のモノサシトンボは淡色部が薄緑色から水色へと変化しますので,この白黒のコントラストに驚かされました.やはりところ変われば品変わるです.オオモノサシトンボとモノサシトンボの区別がよく図鑑に取り上げられていますが,色彩感覚だけだと見間違いもありなんということがよく分かりました.こんなことに感動できるのも,遠征のいいところです.ただ撮った写真をよく見るとやはり淡色部は薄緑色をしていますね.オオモノサシトンボがいるかもしれないといったバイアスがかかっていたのかもしれません.


▲モノサシトンボのオス.腹部第9節全体が白い.▲

そこで,モノサシトンボは兵庫県と同じように水色になるのか,といったことに興味が湧き,探してみました.すると,いました水色の個体が.妙に安心したのを覚えています.遠征して実物を見ることで視点が広がる感覚を実感できました.


▲淡色部が水色をしたモノサシトンボ.▲


▲モノサシトンボのメス.メスはこちらの個体とあまり違わない.▲

さて普通種で盛り上がってしまいましたが,この池が素晴らしいと言われるのは,ハッチョウトンボやアオヤンマがいるからかもしれませんね.


▲ハッチョウトンボのオスとメス.▲


▲アオヤンマの交尾.兵庫県では減ってしまったアオヤンマが元気に飛ぶ.▲

さて,次の四日目です.この日は友人の案内で,もう一度オオトラフトンボに挑戦します.ただ,二日目のオオトラフトンボの飛び方を見て,初めから負け戦的な感覚がありました.諦めてはいけませんので,写真に撮れるよう集中しました.ここのオオトラフトンボは先の池よりは岸近くを飛んでくれていますので,チャンスはあるかもしれません.

池に着いて最初に目にしたのはカラカネトンボでした.これは岸近くを飛び,ときどきホバリングをするので,だいぶんましです.


▲池近くを飛び回るカラカネトンボのオス.▲

ただどういうわけかうまくピントが来たのはトンボが草陰に入ったときだけでした.だがここでアクシデント.トンボに気をとられて池にはまりました.カメラが,水没ではありませんが,一部が水に濡れ,どうかと思いましたが,「しばらくは」動き続けてくれました.そんなころオオトラフトンボが飛び始めました.なんたる不運.しかし濡れた服を乾かしながら,撮影に挑みました.が,やがてカメラが水に浸食されたのでしょうか,動作がおかしくなり始めました.そんな瀕死の状態のカメラで少しだけ写真が撮れました.


▲池を飛ぶオオトラフトンボのオス.▲


▲カメラが生き残っている間に何枚か撮れたオオトラフトンボ.▲

カメラはやがて完全に沈黙してしまいました.ただ今回は予感があったのか,予備のカメラを持参していましたので,次の池に移動する前に着替えをし,カメラを交換し,観察を続けました.

次の池はやたらコフキトンボの多い池でした.産卵もしていました.この池では帯型が見られるかもしれないとのことで頑張って探しましたが見つかりませんでした.


▲ハスの浮葉に産卵するコフキトンボ.▲

あともう一つ池を見に行きましたが,時間帯が遅かったせいか,普通種がちらほらいただけでした.こんな感じで,信越地方への遠征は終わりました.なかなか面白かったので,また行くかもしれません.そうそう,カメラはしばらくすると復活しました.キーボードなど,コーヒーをこぼすと水で洗えなどということを聞いたことがありますが,バッテリーを抜いて,乾燥させると生き返ることもあります.このカメラしばらく使ってみるつもりです.水没の修理は10万円近くかかるので....

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No. 966. ムカシヤンマを探しにいった.2024.5.30.

今年は兵庫県のトンボの状況を確認するために,少なくとも1回は兵庫県に分布しているトンボ種に出会うことを目標に動いています.今日はムカシヤンマを探しに行きました.6月中旬には出現時期が終わりになるので,急がなければならないトンボです.他のトンボを見に行ったときにぽつんと止まっているところによく出会うのですが,今年は全くそういう機会がありません.

今日行ったムカシヤンマのいる谷もそういうところです.この谷今年は異変を感じています.いつもなら結構たくさん見られるニホンカワトンボ,ヤマサナエ,シオヤトンボが非常に数が少ないのです.今日いつもの道を歩いて出会ったのは,シオヤトンボ1頭,シオカラトンボ数頭,ショウジョウトンボ1頭,ヤマサナエは1頭,サラサヤンマ2頭,ムカシヤンマ1頭でした.

この谷では,奥の方の水田は,以前休耕していました.この何年か再び耕作を始めています.その水田から流れ出る水が小川を流れていきます.そこにヤマサナエやニホンカワトンボが群れていたのですが,これがほとんど消えています.同じくこの水田下の道路脇の細流にシオヤトンボがよく飛んでいましたがこれも非常に少なくなりました.今日サラサヤンマ,ムカシヤンマ,ヤマサナエとで会ったのは,この奥の水田より上手です.観察事実だけを述べましたが,原因は想像するより他はありません.

さて,それでは出会った今日の目標種ムカシヤンマを紹介します.オスの姿は全くありませんでしたが,1頭見つけたのが産卵にやって来ていたメスでした.


▲水が染み出ている道ばたの草地で産卵するムカシヤンマを見つけた.▲

この場所は,先日の大雨の影響でしょうか,水がちょろちょろと流れていました.普段は湿気ている程度です.大雨のせいで今日は水が流れているのですが,ムカシヤンマはだまされているのかもしれません.晴れの日が続くと,ムカシヤンマの幼虫が暮らす環境にはならないような場所であると思います.


▲近づいて撮影した.▲

このメス割合に神経質で,私の動きやストロボの光をうっとうしく感じているように見えました.すぐに飛んで場所を変えました.


▲産卵場所をあちこち変えながら産卵を続けるムカシヤンマ.▲

場所を変えてもUターンしてまた同じ場所に戻ることもありました.産卵適所が少ないのでしょうね.私が見つけてから5分ほどで産卵を止めて飛び去りました.

ムカシヤンマの個体数自体が少ないので,産卵メスに出会えるというのは数年に1回あるかないかというところです.今日はそういう意味ではついていましたが,オスの姿が全く見られなかったのが残念です.

そのあと,サラサヤンマの摂食飛翔に出会いました.摂食飛翔はあまりホバリングをしないので写真には撮りにくい相手です.


▲農道で摂食飛翔をするサラサヤンマのオス.行ったり来たりの急旋回が多い.▲

摂食飛翔をしているに出会うのはいつもオスです.メスはどうやって摂食をしているのでしょうか.ちょっと考えたら不思議です.

さて少し進むと,今度は道の上でなわばりを張っているのではないかと思われるオスに出会いました.ホバリングを頻繁にし,さらに植物にぶら下がって止まるのです.これは摂食飛翔の飛び方とは異なります.農道ですので湿地ではありません.これも大雨の影響で水蒸気が立ち上り,サラサヤンマの偏光を感じる視覚に何か影響を与えているのでしょうか.先のムカシヤンマの産卵といい,大雨の後というのは,湿地性のトンボの行動に何らかの影響を与えているように感じました.


▲今度は長くホバリングするので写真が撮りやすい.▲


▲ホバリングを止めて低い位置に静止した.これはなわばりで見せる行動だ.▲

あまりしつこく私が近づくので,嫌気が差したのか,最後は高い木の上に避難しました.


▲最後は高い木の枝に止まった.▲

さて,探索目的は達成したので,この後は夏のトンボ出現状況調査に切りかえました.まずこの谷で見つけたシオヤトンボ.本当に数が少ないんです.そして小さな池ではホソミオツネントンボがいました.ただしこの池にはこれ1頭のみ.


▲シオヤトンボの老熟メス.複眼の灰色が渋い.▲


▲ホソミオツネントンボは毎年6月くらいまでは活動を続けている.▲

場所を変えることにしました.近くのもっと環境のよい池に行ってみることにしました.何がいるでしょう.全く予測が付きません.まず見つけたのが,モノサシトンボです.最近モノサシトンボに出会う機会が減っています.データを整理すると,見つかっている場所の数がレッドデータブックに載る種とあまり変わらないくらいなのです.調査が偏っているだけならいいのですが.


▲まだ羽化直後の個体がいたり,産卵していたり,いろいろなステージがいた.▲

アオイトトンボもたくさん羽化していました,が,どういうわけかメスばっかり.


▲アオイトトンボの羽化してから時間が経っていない個体たち.▲

そして一番驚いたのが,オツネントンボがまだ頑張っていたことです.なんと超高齢者のオツネントンボがまだ元気に交尾をしていました!.ここでは3月30日から産卵活動が開始されていました.


▲超高齢状態のオツネントンボの交尾.頑張って産卵してください.▲

あとはヨツボシトンボが2頭だけ飛んでいました.これ以外には,ギンヤンマ,クロスジギンヤンマ,トラフトンボなどを見ました.トラフトンボもオツネントンボに負けず頑張っていますね.これらは写真に撮れませんでした.


▲ヨツボシトンボはまだ頑張っている.若い感じがする個体だ.▲

最後に新分布の発見です.この池の近くに川が流れていますが,そこにアオハダトンボがいました.アオハダトンボの,この川での生息記録がありません.また季節適期になったとき一度調査する必要があります.


▲新産地発見のアオハダトンボ.▲

ということで,どちらかというと散歩がてらの調査でしたが,意外と収穫がありました.

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今日初出会いのトンボ
No.38. ムカシヤンマ.メス
No.39. モノサシトンボ.産卵.

カテゴリー: 兵庫県のトンボ, 観察記 | No. 966. ムカシヤンマを探しにいった.2024.5.30. はコメントを受け付けていません

No. 965. トンボは次の季節へ,状況調査.2024.5.29.

トンボの季節が過ぎのステージに移り変わろうとしています.夏のトンボの登場です.今日は春のトンボの生き残りと,夏のトンボの出現状況を見に行きました.今後の生態観察の方針を立てるためです.2ヶ所の池に出かけてきました.まずは春の生き残りから.


▲ヨツボシトンボ.数は非常に減って,わずかに生き残りがいた.▲


▲ヤマサナエ.まだもう少し続くだろうが,一時期より減少して今日は1頭だった.▲


▲フタスジサナエ.産卵.まだもう少し頑張るつもりかな?▲

次は,春のトンボと同じぐらいに現れてはいるが,これからが本番のトンボたち.


▲どうしてこんなにどこにでもいるのか不思議.シオカラトンボ.▲


▲ショウジョウトンボは夏の終わりに2化目が出るからまだまだこれからだ.▲


▲クロイトトンボも2化目が出るトンボ.秋口までは出現が続く.▲


▲ギンヤンマもずっと前から飛んでいるが,登場は今日が初めて.▲

以上,私が通季種と呼んでいるグループでした.次はこれから出現してくる夏のトンボたちです.もうすでに成熟して活動しているのがほとんどでした.


▲コフキトンボの複眼が黒い成熟オスと若いメス.▲


▲コシアキトンボ.活動しているオスと羽化しているメス.▲


▲ウチワヤンマ.2頭活動をしていた.▲

いずれも普通種ばかりですが,季節は着実に次へ進みつつあるようです.今年はムカシヤンマを見ずに過ごす可能性が出てきました.早く見に行かないと.あぶない.

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今日初登場のトンボたち
No.34. ギンヤンマ.産卵
No.35. コフキトンボ.オス・メス
No.36. コシアキトンボ,オス・メス
No.37. ウチワヤンマ.オス

カテゴリー: 兵庫県のトンボ, 観察記 | No. 965. トンボは次の季節へ,状況調査.2024.5.29. はコメントを受け付けていません

No. 964. クロサナエなどを見に行った.2024.5.26.

今日は,先日行ってまだ少し早いと感じた,源流域のサナエを見に行きました.クロサナエとヒメクロサナエがねらいです.天候は晴れ,風がやや強い状態.風の強さが原因しているかどうかは分かりませんが,今日はオスのサナエが降りてくるのを全く見ませんでした.目の前を一瞬飛んだのが2回だけ.ただクロサナエは2回産卵にやって来ました.


▲クロサナエ,1頭目の産卵.▲

▲産卵するメスのクロサナエ.▲


▲産卵する2頭目のクロサナエ.▲

だいたい12:30くらいまで待ちましたが,この2頭だけでした.つまり今日見た源流域のサナエは,一瞬通り過ぎたのが2頭とこの産卵メスが2頭の,合計4頭だけでした.少ないなと思います.またムカシトンボは今日は全く姿がありませんでした.数が多かったのはアサヒナカワトンボで,あちこちで追尾飛翔を行っていました.1頭のメスが少しだけ産卵の行動をとって飛び去りました.


▲水しぶきを浴びながらの産卵行動.アサヒナカワトンボ.▲

このあと,サラサヤンマを探しに行きました.もう彼らも元気に活動する時期になっているでしょう.飛翔ポイントでは1頭のオスがせわしなく行ったり来たりして飛んでいました.珍しく,ガンガン陽の当たる場所を飛んでいました.結構動きがランダムで速かったのですが,先日のクロギンを使った練習の成果が出たようです.


▲陽の当たる明るい湿地で往復飛翔を続けるサラサヤンマのオス.▲

昼下がりには,あちこちで情報が耳に入っているハッチョウトンボの確認に行きました.もう出ていました.オスなどは十分成熟し,水辺に出ていました.


▲ハッチョウトンボのオスとメス.▲

あとアオイトトンボの羽化個体が草の中に止まっているのを見ました.いよいよ秋のトンボの出現です.季節が進んでいくのは早いです.


▲羽化直後のアオイトトンボ.▲

源流域の標高の高いところではアサヒナカワトンボの活動が非常に活発でした.しかしハッチョウトンボを見に行くため平地に降りてくると,アサヒナカワトンボはほんのちらほら,あれほどいたニホンカワトンボは完全に姿を消していました.コサナエも非常に数が減っていますし,ヒラサナエももう終わりの時期みたいに貧弱になっています.


▲コサナエはまだ5月なので,普通ならもう少し数は多いと思う.2頭だけだった.▲


▲ヒラサナエは老熟を感じさせるオスが,数頭いただけだった.▲

今年のトンボの出現はどうもイレギュラーな感じが拭えません.出現が遅れているように思えるのですが,一方で早く姿を消してしまったように見えるニホンカワトンボやムカシトンボ.まだ生き残りがいてもおかしくない時期です.もう少し観察を進めて,率直な感想をどこかでまとめておきたいと思います.今日はここまでです.

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今年初見のトンボ
No.31. ハッチョウトンボ.オス・メス
No.32. サラサヤンマ,オス
No.33. アオイトトンボ,オス

カテゴリー: 兵庫県のトンボ, 観察記 | No. 964. クロサナエなどを見に行った.2024.5.26. はコメントを受け付けていません

No. 963. 奄美大島を訪れました.2024.5.24.

急に思い立って,5月21日から23日までの3日間,奄美大島へトンボを見に行ってきました.先月沖縄県へ出かけていっていろいろなトンボを見てきましたが,奄美大島というのは,沖縄県のものと亜種関係にあるものも含めて,独特の種類のトンボが棲息しています.それらを見に行くことを目的に出かけてきました.

「急に思い立って」といっても飛行機などの手配がありますので3週間ぐらい前ですが,やはり梅雨入り直後の時期で雨の心配が当初からありました.それが見事に的中し,3日間ともほとんど日は射しませんでした.それどころか,2日目の22日などは,沖縄・奄美は警報級の大雨.名瀬(奄美市)で24時間で146mmの雨が降りました.

もちろんここまで来たのですから,雨の中トンボ探しに出かけました.出かけるときには,ワイパーを最高速にしても前が見えないくらいの雨が降っていました.ところが9:30ごろにピタッと雨は止み,晴れこそはしませんでしたが,曇の天候になりました.奄美の梅雨はスコールのように降ってピタッと止むような降り方をするとネットに書いてありましたが,まさにその通りでした.が,当然のことながら,トンボの姿は全くありませんでした.川は増水して茶色の水が流れていましたので,川に入ることなどできません.


▲増水して茶色の水がゴウゴウと流れる川.9:00ごろ.雨はまだ降っていた.▲

これはもう最終日の明日もだめだな,とこの時期を選んだことを若干後悔しました.しかし奄美の自然は兵庫県とは違います.茶色の水が流れていた川は,その日の午後には水量が下がり,水の色も薄緑色に変わっていたのです.


▲14:00ごろ,もう水位が下がり,水に透明感が増し,色も薄緑になった.▲

豪雨の時に兵庫県の山地の川の様子を見たことがないので,こちらでも同じなのかもしれませんが,とにかくこの川の水の引き方には驚かされました.翌23日は,水量は多いものの,水は透明で川は普通の様相を呈していました.いやはや驚きの初経験でした.

なお初日21日は,14:00ぐらいまで雨は降りませんでした.昨日まで晴れていたこともあって,ロケハンを兼ねたトンボ観察時に,いくつかのトンボを見ることはできました.そして最終日23日は,予報では午後から雨でしたが結局帰るまで雨は降らず,ときどき日が射すぐらいで気温も高く,昨日の雨で閉じ込められていた鬱憤を晴らすかのようにトンボたちも結構たくさん出てきたように感じました.

今回はそんなで,見た種類を全部記録する暇がありませんでした.この時期に観察に来たのはターゲットがあるからで,天候の関係でそれを探すのに時間を割いてしまったからです.ただ現地で,なんと知人の関東のトンボ屋さんの一行に出会い,たくさんの目で探したこともあって,効率よくトンボを見つけることができました.時々あることですが,関東と神戸の知り合いが奄美大島で出会うとは世の中は狭いです.

前置きが長くなってしまいましたが,今日は五十音順に,観察できたトンボたちを紹介していきましょう.一部を除いて,すべて23日の観察になります.

◆アオビタイトンボ Brachydiplax chalybea flavovittata

沖縄県に行ったときには見つけられなかったトンボです.見たのはオスだけですが,そこそこの数がいました.


▲アオビタイトンボのオス.まだ若くて美しい.▲

これといった活動は見ることがありませんでした.

◆アマミサナエ Asiagomphus amamiensis amamiensis

アマミサナエは今回のメインターゲット種です.オキナワサナエの原名亜種で,いわゆるヤマサナエ的なアジアサナエ属のトンボです.このトンボの一番の特徴は複眼の色にあります.アジアサナエ属のトンボの複眼は通常深い緑色をしています.しかしアマミサナエは青緑色をしているのです.非常にエキゾチックで,これは一見の価値があります.


▲青緑色の複眼を持つアマミサナエ.オス.▲


▲アマミサナエのオス.全部で2個体.▲

よく晴れておれば川面に降りてきてメスを待つ行動をとるのですが,さすがに今日は川に降りてきている個体はありませんでした.たくさんの人の目で探したので,合計3頭のオスが見つかりました.最初の1頭はスギの葉に止まる個体でした.


▲スギの葉に止まるアマミサナエのオス.最初に見つけた1頭.▲

◆アマミトゲオトンボ Rhipidolestes amamiensis amamiensis

次も「アマミ」を冠に持つトンボです.アマミトゲオトンボ.トゲオトンボのなかまはおそらく移動性が少なく,隔離された状態になりやすいのでしょう.南西諸島から九州・四国にかけて,種分化が進んでいます.学名に亜種名が付いていますが,徳之島に亜種トクノシマトゲオトンボ R. a. tokunoshimensis が分布しています.

沖縄県に行ったときには,トゲオトンボのなかまの成熟したメスが全く見つからなかったので,今回はそれを見つけることも目標です.次に登場するアマミルリモントンボは初日にその姿を見ましたので,そのときに見られなかったアマミトゲオトンボが次のターゲットでした.

実は,トゲオトンボならば雨が降っても林の中にいるから見つかるかもしれないと,22日の豪雨の中で結構探し回りました.しかし笑い話になりますが「木を隠すなら森の中」というあれですね.斜面や沢のようなところはどこもかしこも水が流れているので,どれが普段水が涸れていないトゲオトンボの棲息している流れなのかが分かりません.完全な失敗でした.23日は,それまで晴天の続いていた21日に水があった沢に入って探索しました.やはりそこにはちゃんといました.


▲アマミトゲオトンボのオスたち.▲

トゲオトンボは,暗い林の中にいる真っ黒なトンボで,とても見つけにくいのですが,飛ぶと何かが動いたというふうに目に映るので見つかります.最初の1頭を見つけるとあとは割合たやすく見つかります.

さて,オスは見つかりましたが,問題はメスです.かなり急な沢ですので手をつきながら上ることになりますので,ハブが怖い.しかし勇気を振り絞って(大げさですがそんな感じでした)慎重に登っていくと,メスがいました.流れに出ていたので産卵する可能性がありますが,今日は生態観察ではないので,止まっているのを撮影するだけにしました.


▲アマミトゲオトンボのメス.同一個体.▲

やっとメスを見つけることができました.ハブにも出会わずめでたしめでたし.あと,別の場所でも,細流にぽつんと止まっているオスを見ることができました.


▲比較的明るい細流に止まっていたアマミトゲオトンボのオス.▲

◆アマミルリモントンボ Coeliccia ryukyuensis amamii

「アマミ」を冠したトンボの3種目です.あとアマミヤンマというのがありますが,これは夏以降のトンボです.やはり奄美大島に来た目的は「アマミ」を冠したトンボたちです.アマミルリモントンボは,あちこちの流れ,それも本流から細流に至るまであちこちで見ることができました.

沖縄にいるリュウキュウルリモントンボ C. r. ryukyuensis が原名亜種で,こちらが奄美亜種になっていて,奄美大島とその周辺の島々に分布しています.リュウキュウルリモントンボのようにオスの腹部先端が黄色くはないので,ちょっと艶やかさは少ないです.


▲アマミルリモントンボのオスたち.▲


▲黒化型と言ってよいような,腹部にほとんど斑紋がないアマミルリモントンボ.▲

オスの中には,腹部にほとんど淡色斑が出ない個体がいて,黒化型と言ってよいような感じです.こちらの方が全体の黒色が締まって,水色が目立ち,美しさが倍増するように思えます.オスは,羽化してしばらくの間は,淡色斑が黄色で,別種かと思うほどです.この時期のオスはまた別の感じで美しいです.そして黄色の部分を隠すように水色が出てきます.


▲羽化直後のアマミルリモントンボのオス.▲


▲未熟なアマミルリモントンボのオス.▲


▲黄色の上に水色が重なり始めたテネラルなオス.▲


▲淡色斑の発達が悪い黒化型.水色が広がり始めたオス.▲


▲水色になった成熟オス.▲

アマミルリモントンボもメスを探し続けてかなり時間をかけました.しかしながら,羽化直後のメスは見つかったものの,成熟したメスが見つかりませんでした.オスは結構簡単に見つかるので,探す場所が悪いのかもしれません.


▲アマミルリモントンボのメス.いずれも羽化直後.▲

◆オオハラビロトンボ Lyriothemis elegantissima

先月沖縄県で見たときは,未熟期の黄色い個体でした.今回見たのは腹部が赤くなりつつあるようなまだ若い個体でした.腹部の黄色い個体もいた,と別の人が言っていたので,やはりこれからの出現ということになるのでしょうか.


▲腹部は赤と黄色の混じった橙色に見える.オオハラビロトンボのオス.▲

◆オキナワオオシオカラトンボ Orthetrum melania ryukyuense

トカラ列島以南久米島にまで分布するオオシオカラトンボの亜種です.沖縄県でも見ました.このメスを見たいのですが,今回もかなりの探索をしましたが,オスばかりでした.オオシオカラトンボのメスってたいがいどこかに止まっているのが普通なのですが.見つかりません.


▲翅基部の褐色斑と腹部先端の黒斑がオオシオカラトンボに比べて小さい.▲

◆オキナワチョウトンボ Rhyothemis variegata imperatrix

オキナワチョウトンボはまだ出始めのようです.未熟な個体が空き地を飛んでいました.私が見たのはオスでしたが,翅が黒いオキナワチョウトンボを見たと別の方が言っていましたので,これは多分メスでしょう.チョウトンボの類いはこれからでしょう.


▲オキナワチョウトンボのオス.▲

◆コシブトトンボ Acisoma panorpoides panorpoides

湿地状の滞水によく見られる南のトンボです.奄美諸島が北限になっています.いわば分布境界のコシブトトンボ個体群ということです.このトンボも産卵活動を見たことがありません.一度ゆっくりとこういった普通種の観察をしてみたいものです.どうしても南へ来ると数の少ないトンボを追いかけてしまいます.


▲コシブトトンボのオスとメス.オスはイトトンボを食べている.▲

コシブトトンボのオスの食べているイトトンボは,別のコマを見ると尾部下付属器が長く突き出ているように見えるので,おそらくコフキヒメイトトンボでしょう.ただ,コフキヒメイトトンボそのものは私は見ていません.今回はイトトンボをじっくり探す時間がありませんでした.そういえばアジアイトトンボをチラッと見たのですが,江平(2023)では,定着不明種になっていました.やはりきちんと写真を撮っておかないといけません.

◆シオカラトンボ Orthetrum albistylum speciosum

今回は,イトトンボにまではちょっと手が回らなかったものの,シオカラトンボはきちんと記録しておきました.こちらのシオカラトンボの成熟メスの色が妙に明るい色できれいなのが気に入りました.


▲シオカラトンボのオス.非常にたくさんの数が見られた.▲


▲淡色部が薄緑がかって,複眼の緑とマッチしている.シオカラトンボのメス.▲


▲シオカラトンボの未熟なメス.こちらはよく見る色彩だ.▲

◆タイリクショウジョウトンボ Crocothemis servilia servilia

タイリクショウジョウトンボはシオカラトンボに次いでたくさんいたトンボです.こちらは産卵活動をするメスも見ました.


▲タイリクショウジョウトンボのオス.▲


▲産卵に飛び回るタイリクショウジョウトンボのメス.▲

◆ハネビロトンボ Tramea virginia

沖縄県に入ると,ハネビロトンボよりヒメハネビロトンボの方を多く見かけます.というかハネビロトンボを見つけるのが意外と難しい.その点奄美大島では飛来以外はハネビロトンボがいるだけですので,ある意味安心して写真を撮ることができます.


▲ハネビロトンボのオス.▲

オスが現れる前に,メスが単独で打水産卵しているのを見かけました.ただ少し離れたところなので,写真に撮るのは難しい状態でした.


▲単独打水産卵するハネビロトンボのメス.▲


▲ハネビロトンボは,午後になるとよく止まる.▲

◆ベニトンボ Trithemis aurora

ベニトンボもたくさんいましたが,オスが飛び回っている割にはメスの姿が少なかったように思えます.先月たくさん記録したので,今日はいた証拠写真ていう感じです.


▲ベニトンボのオス.やはりこのケバケバしさは南国のトンボである.▲

◆リュウキュウギンヤンマ Anax panybeus

今回の観察地にはリュウキュウギンヤンマがそこそこ飛んでいました.先日クロスジギンヤンマで飛んでいるトンボの撮る練習をしたのはまさにこのためだ,てな感じでずいぶんシャッターを切りましたが,曇で暗いのと飛ぶのが遠いのとで,あまりいい出来ではありませんでした.ただ,1回だけ木に止まったのを偶然目にしたのがよかったです.また産卵にもやってきたのですが,すぐいなくなりました.


▲何か餌を捕まえたのか,木にとまったリュウキュウギンヤンマ.▲


▲池の上をパトロールするリュウキュウギンヤンマのオス.▲


▲空き地の上空で摂食飛翔をするリュウキュウギンヤンマのオス.▲


▲短時間産卵に入ったリュウキュウギンヤンマのメス.▲

リュウキュウギンヤンマの産卵メスはとても敏感にこちらの動きに反応し,ちょっと嫌気が差すと私から離れていって,ついには池から出ていきました.

◆リュウキュウトンボ Hemicordulia okinawensis

リュウキュウトンボは今回出会いを予定していなかったトンボで,出会えたことが非常に嬉しかったです.しかもかなり接近して観察が出来ました.これは私があまりその生態を知らなかったことが大きな原因だと思います.幼虫採集の経験から流水性であることくらいは知っていましたが,どんなところをどんなふうに飛び,どんな繁殖活動をするのか見たことがなかったのです.今回まずいきなりの出会いがリュウキュウトンボの産卵でした.

先に紹介したタイリクショウジョウトンボの産卵を観察しているときに,突然黒いトンボが入って来て連続打水産卵を始めたのです.シオカラトンボかと思いましたが色が違います.本当に影のように真っ黒.とにかくシャッターを切り続けましたが動きが速く手に負えそうにありません.やっと1枚だけトンボの確認ができる写真が撮れました.


▲まず最初に出会ったのが産卵するリュウキュウトンボのメスだった.▲

次に川の上を飛ぶリュウキュウトンボを見つけました.行ったり来たりしながら一定の空間を飛んでいます.少し離れたところを飛んでいるのですが,ときどき近づくことがあるので,その瞬間を期待して写真を撮り続けました.


▲川の上を飛ぶリュウキュウトンボのオス.2頭見られた.▲

まあ以前採集はしたことはあるものの,初めて接近観察したリュウキュウトンボの成虫なので,このくらいできたら満足というところでしたが,まだこのあとラッキーが続きました.14:00を過ぎることから,最初産卵を見た場所で,オスが2頭ほどパトロールしながら飛ぶようになりました.こちらの方が流れの幅が狭いので,写真には撮りやすいので,しばらくねばることにしました.


▲パトロールするリュウキュウトンボのオス.▲

なかなかピントが来ないなどと思っているとき,突然1頭のオスがメスを捕まえタンデムになり交尾を始めようとしています.「産卵に入っていたのか?」とちょっと残念な気持ちになりましたが,この交尾ペア,すぐ近くの草むらに止まりました.ただ対岸なので水の中を渡るしか近づく方法がありません.ちょっと深そうで長靴の中に水が入るのを覚悟しなければなりません.


▲対岸の草むらで交尾を始めたリュウキュウトンボのペア.▲

何枚かシャッターを切って渡ろうかどうか迷っているとき,風が吹いてこのペアが飛ばされました.遠くへ行ってしまうかと思われたとき,なんと逆にこちらの岸に飛んできて目の前に止まったのです.


▲こちらの岸に来て止まった交尾ペア.▲

角度が悪く交尾ペア全体にピントが来ないと思いながら写真を撮っていますと,やがて交尾が解消されました.ああ終わったかと思ってトンボたちを見ていると,またまたあり得ないようなラッキーが起きたのです.交尾を解かれたメスが私の目の前でホバリングして飛び始めたのです.まさに「私を撮って」とでもいうような感じです.こんなことがあるでしょうか?


▲目の前でホバリングするリュウキュウトンボのメス.▲

写真の鮮明さから,かなり近いことが分かるでしょう.1mも離れていません.沖縄県へ行った時も,最後の最後にオキナワサナエのメスが目の前に現れて,しばらくの間逃げることもなく私が撮影するに任せていたときと同じような状況に思えました.あのときもこのときも,これでぎりぎり最後というような時間帯でした.

◆リュウキュウハグロトンボ Matrona japonica

リュウキュウ・・・というトンボが続きます.次はリュウキュウハグロトンボ.これはまたきれいなトンボなのですが,残念ながら,まだすべて未熟な状態でした.沖縄県ではもう成熟した個体もいましたが,こちらは同調的に羽化したのか,たくさんの個体がいたにもかかわらず,すべてまだ翅が茶色のものばかりでした.


▲まだ未熟なリュウキュウハグロトンボたち.▲

◆リュウキュウベニイトトンボ Ceriagrion auranticum ryukyuanum

リュウキュウ・・・の最後はリュウキュウベニイトトンボです.草原で休んでいました.


▲リュウキュウベニイトトンボのオス.▲

別の産卵ペアも見ましたが,対岸でしたので,諦めました.

以上16種類を記録できました.イトトンボをもっと真剣に探す時間があれば,あと,2,3種は増えていたと思います.ミナミヤンマなど大型のトンボたちはこれからでしょう.

まあ,雨にたたられた遠征でしたが,沖縄などは雨が降っても止めばトンボが飛び出てくるという32年前の経験則はまだ健在のようでした.

カテゴリー: 県外のトンボ, 観察記 | No. 963. 奄美大島を訪れました.2024.5.24. はコメントを受け付けていません