No. 925. コフキトンボの帯型を求めて.2023.6.25.

今日は移動日なのですが,半日ほどトンボ観察に出ました.まずは昨日見つけたコフキトンボの帯型の探索です.今日は朝から曇り空で,気温が上がりきらず,トンボの動きが鈍い感じでした.元気なのはコシアキトンボです.コフキトンボは何頭か止まっているだけで,ほとんど動きません.池を歩き回ってやっと1頭だけ帯型を見つけました.ただ,低い位置に止まっていたのを発見が遅れ,木の上に上がらせてしまいました.しばらく待ちましたが,降りてきませんでした.


▲帯型のコフキトンボはいるものの,接近遭遇がかなわなかった.▲

2時間近くの探索を行いましたが結局これで終わりでした.帰り際にコシアキトンボが産卵していましたので,パチリ.


▲コシアキトンボの産卵.▲

その後近くの川に出かけました.ニホンカワトンボがまだ生き残っていました.それにアオハダトンボ,ミヤマカワトンボ,ハグロトンボもいました.つまりこの地域のカワトンボが一堂にそろっていました.さすが6月です.


▲ニホンカワトンボの透明翅型オス(上)と橙色翅型オス(下)▲


▲アオハダトンボのメス.▲


▲ハグロトンボ,シャッターを切った瞬間に飛び立った.▲


▲ミヤマカワトンボのメス.▲

あとマユタテアカネがもう腹部が赤くなっていました.特に下の写真などは秋に見られるような色彩に変化した個体です.兵庫県では今はまだきっと体が黄色いままの状態で,こんなのが見つかるとニュースにしても良いぐらいです.やはり所変われば品変わるですね.ミヤマアカネの方はまだ未熟な感じで,2頭見られました.


▲マユタテアカネのオス.もう腹部が赤い!.▲


▲ミヤマアカネのメス.ミヤマアカネはこれから増えてくるという.▲

と,半日ほどトンボ観察をし終了しました.

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No. 924. オオモノサシトンボの観察.2023.6.24.

今日は昨日よりさらに東へ移動し,関東地方へオオモノサシトンボを見に行きました.ネットで情報交換をしている方の案内で,生息地へ連れて行ってもらいました.オオモノサシトンボの生きている個体を見るのは,昨日までのアマゴイルリトンボと同じく,初めてです.はからずも2種ともモノサシトンボ科の種でした.

前泊し,朝恐る恐る空を見上げましたら,青空が!.予報では一日中曇りだったのですが,私は晴れ男なのでしょうか?.さて観察地に入ったのは9:30ぐらいでした.ヨシを中心とした水生植生と陸生植生が混じり合った岸に沿って,オオモノサシトンボを探して歩きました.水面にはびっしりとガガブタ・スイレンなどの浮葉植物が繁茂しています.産卵基質になるのでしょうか.ほどなく草の間をふわっと飛ぶオオモノサシトンボが見つかりました.一見してモノサシトンボとは違うということが分かりました.黒っぽく見えるのですね.


▲オオモノサシトンボの成熟オス.黒が締まった色をしていて美しい.▲


▲オオモノサシトンボの成熟メス.淡色部が淡い黄緑色をしている.▲

初めのうちはこちらが殺気立っているのか,アマゴイルリトンボと同じようにすぐに逃げていきます(笑).よく観察を続けていると,オスは成熟個体が多いのですが,メスは未熟個体の方が多いように見えました.ただ成熟メスはうまく隠れているのかもしれません.


▲草の間に潜んでいるオオモノサシトンボの成熟オスたち.▲

成熟オスの中には,水面上の葉に止まっている個体があって,そういう個体はあまりその場所を動こうとしません.メスを待っているのかもしれません.


▲水面に出ているオオモノサシトンボの成熟オス.ときどき飛び立つが元に戻る.▲

写真を見て分かりますが,成熟オスは中肢・後肢の脛節の白色部がよく目立ちます.実際飛ぶときにはそれを目だ立たせるようにして,まるでグンバイトンボのように飛んでいます.その記録を撮ろうと頑張りましたがかないませんでした.また腹部先端を大きく反らせる行動をとることも観察しました.アオハダトンボ属のトンボが行うような感じです.ただ,メスへのアピールではなくオス同士の時にその行動を行っていました.


▲オスの腹部先端を大きく反らす行動.▲


▲オス同士が絡み合ったときに見られた.両方ともやっている.▲

この腹部先端を反らす行動は,実はメスにも見られます.これはアオハダトンボ属では見られない行動です.下の写真は,はじめはオスだとばかり思っていたのですが,それは全くの先入観,形態的特徴からメスだと判定しました.下の写真と比べると分かりますが,オスの場合は,ほぼ同じ後ろからの角度で見ても脛節の白い部分がはっきりと確認できます.一方腹部を上に反らせている方の個体は脛節の外側(後ろ側)が白くありません.


▲腹部先端を反らしながら飛ぶメス.脛節が白くないのでメスと分かる.▲


▲ほぼ同じ角度から見たオスの写真.脛節の白色がはっきりと確認できる.▲

もちろん腹部先端を反らせずに飛ぶことも普通ですので,この行動には何らかの意味があるはずです.あまりモノサシトンボでは見たことがないと感じている行動ですが,今度念入りに観察してみたいと思います.


▲腹部先端を反らせずに飛ぶオオモノサシトンボのメス(上)とオス(下).▲

さて,オオモノサシトンボの飛翔行動も面白いのですが,まだまだ未熟な個体も目立ちました.特にメスに多い印象でした.


▲複眼の背面がまだ白く,羽化してまだあまり日齢がすすんでいないメス.▲


▲脚が赤く,未熟色満開のメス.▲


▲未熟なメス同士がにらめっこ状態で静止.▲

オスの未熟個体はそれほど多くないようでした.雄性先熟がみられるといっていいかもしれません.オスの未熟個体は目立たない褐色で,メスのように脚全体が派手に赤くなることはありません.

▲未熟なときから脛節の白が目立っているオオモノサシトンボの未熟オス.▲


▲複眼背面の色が淡く,脚も赤と白のグラデーションを見せる未熟なオス.▲

さて,こんなことをして観察を進めているうちに,12時前になりました.しかしながら全くと言ってよいほど交尾や産卵を行う気配がありません.オスとメスが草の中で出会っても,オスは全く関心なしといった行動を見せています.

ミヤマカワトンボなどのように普段オスとメスが同所的に生活しているトンボでは,ある時刻になるとオスがその気になり,メスはそれに対して交尾拒否姿勢か受け入れるかの態度をはっきりさせるような行動が見られますが,オオモノサシトンボでは全くそういった気配すらありません.ただメスの未熟個体が多かったことから,ここの個体群はまだメスが十分に成熟していない可能性が考えられました.13:00過ぎには,今日は繁殖活動はなしと判断して,オオモノサシトンボの観察を終えました.

オオモノサシトンボの観察中に,コフキトンボの帯型メスを見たので,この後これを探すことにしました.


▲コフキトンボ帯型メス.見た場所に再確認に来てみると木の上に上がっていた.▲

オオモノサシトンボの観察地の池を周回して探してみましたが,この個体以外は見つからず,通常色の個体ばかりでした.


▲コフキトンボの若い成熟メス(上)と老熟メス(下).▲

その後,何カ所か回って,最後の池でやっと帯型メスを見つけました.ただ止まっている位置が遠いので,写真はかなり難しかったです.木の枝を放って飛ばせてみましたが,より遠いところへ行ってしまいました.


▲コフキトンボの帯型メス.▲


▲上と同じ個体だが,より遠いところに止まった.▲

帯型はこの個体以外にもう1頭いました.こちらはすぐに姿を消しました.コフキトンボは明日の移動までにもう一度チャレンジすることにして,今日の観察を終えました.最後にこれらの観察の道中に出会ったトンボたちを紹介しておきます.


▲オオモノサシトンボを観察中に目の前で産卵したショウジョウトンボ.▲


▲コシアキトンボは訪れた各地に普通に見られた.最後の池での産卵.▲


▲珍しくコガネグモの巣にかかったウチワヤンマ.ウチワヤンマもたくさんいた.▲


▲どこにでもいたシオカラトンボ.▲

これら以外にチョウトンボ,クロイトトンボ,セスジイトトンボ,オオヤマトンボ,ギンヤンマなどが見られました.

天気は,午後雲が多くなりましたが,人間様にはこのほうが動きやすくて良かったように思います.明日もトンボ観察旅行は続きます.

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No. 923. アマゴイルリトンボの観察.2023.6.23.

昨日は,天気予報がいい方に外れ,わずかな明るい曇り空の中,アマゴイルリトンボの姿を見ることができました.天気予報によると,今日はひょっとしたら雨と雨の間に挟まれた曇り空が広がる可能性がありました.せっかくここまで来ているのでダメ元でもう一度アマゴイルリトンボの観察に行くことに決めていました.夜中にはそこそこの雨が降ったようで,朝起きると地面や草木がびっしょり,でも空は雲の切れ間から青空が見られ,日も差しています.またいい方に予報が外れるかもしれません.現地に着くと青空がありました.


▲雨上がりの青空です.今日はうまくいくかな...▲

池面ではもうクロイトトンボが飛び回り,産卵もしていました.ただ空には雲が広がり始めました.ねずみ色のやや厚い雲です.


▲クロイトトンボの産卵.▲

アマゴイルリトンボはまだ池面には出ていないようです.ただ,岸近くのヨシの植生の中から,羽化直後のアマゴイルリトンボが次々と飛び立つのを観察しました.


▲池の方から羽化して次々と飛び立ってくるアマゴイルリトンボ.▲

こうなっては,羽化しているところを見たくなるのは当然です.しかしこれがなかなか見つかりません.そっと岸辺の草むらをのぞき込んで約10分,やっと羽化殻のそばに止まるアマゴイルリトンボの羽化個体を見いだしました.ただ,草の中なので写真には障害となる草があります.でもそれが実際の姿なので,草越しに記録をとりました.


▲羽化しているアマゴイルリトンボ.▲

だんだんと時間が過ぎていきますがアマゴイルリトンボは水面には出てきません.空はだんだんどんよりとした感じになってきつつあります.そこで,昨日のように草の中にいるアマゴイルリトンボを見に行ってみました.昨日より少ない感じはしましたが,それでもそこそこ飛んでいました.


▲アマゴイルリトンボのオスたち.下はまだ未熟なのだろう,淡色部が白い.▲


▲アマゴイルリトンボのメス.▲

10:00過ぎ,繁殖活動は,やはり曇り空では無理なのかと思い,今度は少し池から離れた草地をのぞいてみました.すると,交尾態のカップルが止まっていました.繁殖活動をやっているようです.


▲アマゴイルリトンボの交尾.10:08.▲

やがて交尾は解かれ,ペアはタンデム状態で池の方に向かって飛びました.これは途中で見失ってしまいましたが,飛んだ方向と池に浮かぶ産卵基質(枯れた水生植物の葉や茎)の存在する場所に目星をつけ,行ってみました.すると,そこには産卵に来ているアマゴイルリトンボのペアが複数飛んでいました.


▲池に現れたアマゴイルリトンボのペアたち.▲

こうなれば,産卵の観察も時間の問題だと思いました.ところがです.なかなか産卵を始めません.待つしかないので待っていると,葉に止まっているペアがだんだんと水面の方に降りていきます.そしてやっと産卵を始めました,が,私がほんの少し動くと,それも1~2mも離れた位置でです,さっと産卵をやめ飛び上がって,また葉に止まるのです.何度やっても同じです.近づけないどころか動けないのです.非常に敏感なトンボです.モートンイトトンボも産卵メスは非常に神経質ですが,それよりもっと神経質にこちらの動きに反応します.ねらいをつけるペアを変えても同じです.


▲かなり離れたところで,こんな向きのままシャッターを切るしかなかった.▲

12:00まで約2時間,とにかく息詰まる攻防戦という感じで,相手を替え場所を変えて産卵の写真撮影に挑みました.警戒してか植生の中で産卵するし,きれいに横からなんていうのは無理でした.それでも何回かはシャッターを切るチャンスがありました.


▲ほとんど,待っている立ち位置から撮影したものである.▲

この歩哨姿勢は水面ギリギリにカメラを置いて撮影するのが一番です.ただ一回だけそのチャンスに恵まれました.


▲やっとねらったような写真が撮れた.▲

今までの撮影でこんな難敵は初めてでした.ここはカエルが多いので,それを警戒して,ちょっとした異変でも飛び立つように学習しているのか,あるいは選択が働いているのかもしれませんね.

さて,今日は晴れていた時間帯があったので,曇った後も,メスたちが産卵に出てきているようでした.コサナエがいました.オスが数頭,メスは2回産卵に来ました.


▲コサナエのオスとメス.メスは産卵に来たもの.▲

それから,エゾイトトンボを見つけました.ルリイトトンボとエゾイトトンボがいましたので,そのほかにもいるかもしれません.アマゴイルリトンボは一応来た目的を達しましたが,その他のトンボが気になります.帰りにもう一度寄るつもりです.


▲エゾイトトンボがいた.▲

なお空気が湿ってきて気温が下がったので急いで車に戻りましたが,途中で本降りの雨に遭い,びしょ濡れになりました.北のトンボたちは,このような隙間的好天に反応して,繁殖活動をしているのですね.朝晴れたのが良かったです.繁殖活動を始めてしまってから曇ってきたので,中断はせず,厚い雲の下で産卵活動を継続していました.

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No. 922. アマゴイルリトンボを見に行った.2023.6.22.

今日はアマゴイルリトンボを見に上信越地方へ出かけました.何しろ遠いので,旅館を予約してから天気よ良くなってくれ,と願うだけでした.しかし,予報は見事に雨雨雨.梅雨前線が南の方に,日本海には低気圧が梅雨前線に沿うように進んでいく構図です.まあ観光旅行だと割り切って,出かけました.ということで,今日も観察記ではなくエッセイとしました.

朝起きますと,雨の音がパラパラ出窓をたたいています.予想していたことなので,6:30ごろに出かけました.晴れていたら本当はもっと早く夜中に出かけるつもりでした.雨ですからそんな無理をすることもありません.舞鶴道・舞鶴若狭道・北陸道と走って行きますと,雨が降り続き,おまけに低気圧がそばにいるからか,ものすごい嵐のような風が吹き荒れて,木々が波打ち,車のハンドルが取られるくらいです.こんなもの,トンボが出てくるわけはないや,とのんびり走行しました.

ところが,金沢を過ぎたあたりから雨がやみ,薄日が差してくるようになりました.なんだこれは,いい方に予報が外れそうです.アクセルを踏む足にも力が入り,それまで100km/hの制限速度の所をトラックについて80km/h位で走っていましたが,一気に指定速度での走行,遅いトラックは追い越し,と運転に力が入りました.

目的地到着は14:00少し前.気温は22℃.日差しはありませんが雨が降った形跡もありません.これは池に出ていなくても周辺の草地で摂食ぐらいはしているはずだ,と見当を付け,目的の池に進みました.しかし駐車場から結構遠い.天気が崩れるかもしれないのでイライラしながら,山道を歩きました.20分以上かかって到着.池には全くトンボは出ていません.予定通り池のまわりの道を探索し始めました.ほどなくイトトンボが飛びました.なんと,クロイトトンボ.このトンボ本当にどこにでもいますね.でも,未熟なクロイトトンボのオスは他にはない美しさがあります.クロイトトンボの名称がしっくりきますね.


▲クロイトトンボのオスとメス.▲

少しがっかりしていますと,青いモノサシトンボが飛びました.いました.アマゴイルリトンボ.メスもいます.ただ,結構敏感に私の動きを感じるようで,なかなか近づかせてもらえません.


▲草の中に潜り込んでいたアマゴイルリトンボのオスとメス.▲

近づこうとすると,どんどんと草の中の方に入ってしまいます.最初に見つけたこの個体たちが最初で最後になるかもしれないので,かなりねばりましたが,近づけませんでした.仕方ないので,さらに先をめざしました.すると,明るい水色のトンボがいました.ルリイトトンボのようです.やはりこんな所にはルリイトトンボがちゃんといるんだと思いました.北の方の普通種でしょうか?


▲ルリイトトンボのオスたち.▲

ルリイトトンボのメスを探しましたが,見つかりませんでした.少しまた歩きますと,アマゴイルリトンボがあちこちから出てきました.たくさんいます.おそらく天気が中途半端なので,池面には出ることなく,全員草の中で摂食をしているのでしょう.かえってこんな天気が幸いしたかもしれません.池面に出られると,むしろ近づくことが難しくなりますから.


▲やはり見つかるのはオスの方が圧倒的に多い.▲

そんなとき普通のモノサシトンボも止まっていました.いるんですねぇ.2頭見ましたが,まだいずれも未熟な個体だったので,アマゴイルリトンボより少し遅れて出てくるのかもしれません.


▲モノサシトンボのメス,未熟.▲

ということで,草の中でちょろちょろしているトンボを見ただけで,繁殖活動などは観察できませんでした.池をちょうど一周した頃,雨がパラパラしてきました.また風も木々をうねらせるようになりました.どうやら低気圧を追い越して到着したようです.雨に濡れながら,池から駐車場へ引き返し,宿に向かいました.近頃はどこでもWiFiがあるので,宿に到着後早速アップした次第です.

このあとさらに東の方にトンボ観察に出るつもりですが,晴れれば,帰りにもう一度寄ってもいいかも...

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No. 921. ハッチョウトンボの産卵.2023.6.20.

今日は薄曇りだったのですが,梅雨時でもあり,このような天気でも調査に出た方がよいと考えて出かけることにしました.最初のねらいは神戸のキイロサナエです.過去にたくさんの記録がある場所へ出かけたら,川に沿った通り道の草刈りがなされていなくて(といっても文句を言う筋合いではないのは承知していますが),藪漕ぎ的な進軍を余儀なくされました.でも目的の場所に着いても,何もいません.シオカラトンボが1頭だけ飛んだだけでした.

そこで,次に目的を変え,神戸のグンバイトンボが生き残っているか確かめに行くことにしました.やはり過去の記録地に行きましたら,今度は30分ほど川に沿って歩いて,シオカラトンボ1匹さえ飛ばず,全くトンボと出会いませんでした.一体何なのだこれは,と非常な落胆を覚えました.30年あまり前ここは,ホンサナエがいっぱい飛んで,アオサナエもいて,グンバイトンボがツイツイ飛んで,セスジイトトンボも飛んで,というところでしたが....神戸のトンボはどこへ行ったのであろう...30年という月日の重さを否応なく感じさせられました.歳をとると喪失感を味わうとよく言われますが,本当にこれが喪失感そのものです.

こうなると,なんとかトンボを見て帰らないと欲求不満になります.ということで,この場所の近くにある某有名湿原に行くことにしました.ここはいまでこそ有名地になって完全に管理されていますが,私が神戸のトンボを探していたころには,アクセスが悪いのを我慢して入っていった場所です.そのころは全く自由に湿原の中でトンボの観察が出来ました.まあこれも時の流れですね.今は木道が整備され,そこからハッチョウトンボが身近に観察できます.


▲ハッチョウトンボのオスとメス.交尾を解いたすぐ後のカップル.▲

着いたのがちょうどお昼前,ハッチョウトンボが繁殖活動を行う時間帯です.木道から見える目の前に,交尾しているカップルを見つけました.ただ,これはすぐに離れましたので記録にはありません.メスは交尾後止まったままじっとしていますが,やがて産卵を始めるはずです.待つことにしました.すると,もう1頭メスがいたようで,草陰から飛び出し産卵を始めました.


▲草陰から飛び出したもう1頭のメスが産卵を行った.▲

このメス,撮影時からなんか色が白っぽいなと感じていましたが,家で写真を見て分かりました.翅胸前面・側面の斑紋が,通常のメスと違っているのです.下の写真と比べてみるとよく分かります.


▲通常の斑紋のメス.上のメスは淡い部分がぼやけるように広がっている.▲

さらに別の場所で撮った未熟なメスとも比べてみましたが,未熟であっても,斑紋の基本的なパターンは同じで,このメスはやはり斑紋異常と言えそうです.


▲2023年6月4日撮影.未熟なハッチョウトンボのメス.▲

さて,このメスはやがて産卵を終えて飛び去りました.オスがそれを追いかけていきました.最初のメスはまだ止まったままで産卵を始めていません.オスたちは相変わらずあちこちで追いかけ合いをしています.


▲オスたちは相変わらずものすごい速さで追いかけ合いをしている.▲

しばらく待ちますと,最初のメスが産卵を始めました.ハッチョウトンボは産卵の途中でよく静止します.このメスも例外ではありません.


▲最初のメスが産卵を始めた.▲

何度も静止を繰り返して打泥産卵を行っていましたが,やがて別のオスに捕まって交尾されてしまいました.


▲ハッチョウトンボの交尾.たいがい産卵した後の交尾なので,成果はあるか?▲

その後このメスを見失ったので,ここまでとしました.空は少しずつ青空が広がり,気温も上がってきました.帰り道に別の木道のところでメスを捕まえ交尾するハッチョウトンボを見つけました.記録をとりましたが,メスは交尾後飛び去りました.先と同じで,きっと産卵後交尾だったのでしょうね.


▲交尾するハッチョウトンボ.十数秒で終わったあとメスは逃げ去った.▲

ということでハッチョウトンボはそれなりにいて活動していました.でも,他のトンボがほとんど見られません.往き帰りを含めて湿原およびアクセス道路をかなり歩いたのですが.シオヤトンボ1頭,コシアキトンボ1頭,アサヒナカワトンボ1頭を見ただけでした.本当にトンボが少ない.途中うす暗い池などもあったのですが,モノサシトンボ1頭すらいませんでした.うーん,多様性に乏しすぎる....

今日はここまでです.

カテゴリー: 兵庫県のトンボ, 観察記 | No. 921. ハッチョウトンボの産卵.2023.6.20. はコメントを受け付けていません