No. 1037. ギンヤンマとナツアカネ.2025.7.27.

今日は兵庫県の北部へ,いくつかのトンボの状況を調べるために出かけてきました.まずはヤブヤンマ.生息地に入ったのは正午ごろです.産地は最近の雨の少なさと高温で水が涸れていました.こうなるとヤブヤンマは絶望的です.そこで転進し,ヒヌマイトトンボの状況を見に行きました.気温は36℃.炎天下のヨシ原は地獄的でした.しかしヒヌマイトトンボは全く姿が見られませんでした.消えてなければいいのですが.

いずれにしてもトンボ調査これで2連敗.次はネアカヨシヤンマ.いつも14時ごろに産卵に来ます.しかしこれも,時期的にまだ少し早いこともあってか,3連敗.3時ごろまで待って次に行こうかと思っていたとき,1頭のヤンマのメスが入りました.地面に止まって産卵をしています.しかしネアカヨシヤンマではありません.近づいてみますと,なんとギンヤンマのメス,それもオス型のメスでした.


▲湿った地面で単独産卵するギンヤンマのオス型メス.▲

これはある意味ネアカヨシヤンマより珍しい生態的観察だといえそうです.ギンヤンマはいろいろな産卵基質を用いることが知られています.しかし水のない泥土に産卵するのは比較的稀です.次に単独産卵すること.水があってオスが飛び回っている池ではたいがい連結産卵です.


▲同じ日別の場所で見た連結産卵.単独オスがまわりを飛び回っていた.▲

この場所は水のない天水湿地.水がたまっているときにはギンヤンマもやって来ますが,草原状態のこの状態ではオスはふつう活動しませんので,メスは安心してのんびりと産卵できます.そして最後がオス型のメス.これはそれほど多くはない多型の一種です.いわば三拍子そろった感じです.

このメスの産卵場所を見ていると,ネアカヨシヤンマと同じで,イノシシの足跡に産卵することが多く,そこで産卵を始めると落ち着いて長い時間産卵を続けます.産卵は30分以上続きました.ギンヤンマのメスも,本当は単独で産卵したいというのが,本音なのでしょうね.それにしても,外気温は37℃になっていましたが,日向で産卵するギンヤンマ,頑張りますね.


▲イノシシの足跡に産卵するギンヤンマ.▲

ということで次です.先日県外へナゴヤサナエを見に行きましたが,今日は夕方に県内のナゴヤサナエを見に行く予定です.まだ時間的には早いので,ちょっと小川や池にトンボを見に行きました.そのとき,珍しいものを見ました.ナツアカネの集団避暑です.

ナツアカネが夏の間どこにいるのかについての知見は,アキアカネほどはっきりしていません.私もずいぶん昔に未熟な個体がたくさん集まっているのを見たことが一度あるだけです.


▲日陰に集団で止まるナツアカネの未熟個体.▲

これらは,羽化してまだ間がないことは確かですが,羽化直後というほどでもありません.また写真には撮れませんでしたが,腹部が赤味を帯びている個体も1頭見かけました.場所は特別なところではなく,林縁の日陰で風通しがよく,私が37℃の外気温の中で立っていても涼しく感じるようなところです.


▲ナツアカネが集まっていた林縁の笹原.この林床に止まっている.▲


▲オス・メス入り交じって,低い位置に静かに止まっている.▲

数を数えてみると,上の写真の範囲で30頭以上でした.以前にこういった集団を見たときには,後日にはすべて姿を消していましたので,この集団も一時的なものかもしれません.また来たときには探してみたいと思います.ナツアカネは,とある生息地でまとまって羽化した場合,羽化してしばらくはこのように涼しい林縁・林床に集まって過ごしたあと,分散してばらばらになって過ごすのかもしれませんね.

あとナツアカネの観察をしているときに,キイロサナエがこの日陰に飛び込んできました.7月下旬という遅い記録です.


▲キイロサナエのオス.▲

さて最後のナゴヤサナエですが,18:00まで待ちましたが,全く飛びませんでした.気温はまだ35℃.本当に老体には命がけの観察です.今日は目標とするものは全敗,外道で成果がありました.

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