神戸のトンボたち
K075. ミヤマアカネ Sympetrum pedemontanum elatum
未熟なメスの静止.2010.8.22.,神戸市灘区.
未熟なメスの静止.2010.8.22.,神戸市灘区./神戸市RDB:
 1971年秋,高校生の私が北区の谷上へ初めて遠出してトンボの採集に出かけたときに,本種が多数そこに産することを確認しました.黄色い秋の陽光を浴びながら,本種が黄緑色の稲穂の上をゆきつ戻りつ無数に飛び交っていました.この美しさに感動し,あの色と風景は今も記憶に鮮明です.
 そのころの谷上は,神戸電鉄の駅が田んぼの中にぽつんとあって,かやぶき屋根の農家が立ち,風の音が聞こえるだけののどかな山間の田園地帯でした.長い空白の後,1988年同地を訪れると,嘘のようにまったく本種の姿を見ることができなくなっていました.アカトンボ類はアキアカネ,ナツアカネ,マユタテアカネが活動しているに過ぎませんでした.北神急行谷上駅建設のためにあたり一帯が整備され,あちこち地肌がむき出しになり,川にはコンクリートが貼られていました.山田川(志染川)の形もすっかり変わっていて,昔の面影はなく,たくさんいたハグロトンボも激減していました.
 その後,それでも本種がまだ神戸市のどこかに生き残っているはずだという信念で各地を飛び回りましたが,結局1988年以後,オス1頭を北区で,メス1頭を東灘区で採集したにとどまりました.そして,2010年,久しぶりに六甲山で出会うことができました(写真).
 過去の記録からみますと,神戸市ではもともと分布の広い種ではなかったようです.一部の少数記録を除きますと,本種の多産したところは,有馬を中心とする裏六甲の地域,及びその北方の道場地域に限られていましたので,その地域の開発が盛んな現在,数が急速に減ってしまったと思われます.