前ページへ 目次へ 次ページへ

 K021.アオモンイトトンボ Ischnura senegalensis 
 ▲交尾.2006.8.27.,神戸市西区.


各区の記録状況 (●:2005年以降の記録,○:2004年以前の記録,×:公表記録なし)
北区 西区 垂水区 須磨区 長田区 兵庫区 中央区 灘区 東灘区
× ×

 神戸市ではたくさんの観察記録があります.

 地域的にみると,西区から須磨区,垂水区にかけてはかなり普通に見つかっていますが,意外にも,北区の田園地帯や山間部の池では発見例が非常に少ないということが特徴的です.

 このように特徴ある分布は,本種の生息環境を考える上で興味深いものがあります.単に標高だけが問題だとするならば,西区の多さにくらべて北区の田園地帯にわずか2例しか見つかっていないのが不思議です.

 発見される池の環境としては,明るい開けたところに多いという印象を受けます.西区の,水田のまっただ中にあるまわりに木立も何もない池に,シオカラトンボとアオモンイトトンボだけが見られたりすることも多いです.また木立のある池でも,どちらかといえば開けた部分に現われます.谷をせき止めてできた,周りが木立で囲まれているため池には少ないように思われます.このあたりが,山間部に見られない原因かも知れません.

 次に,成虫の現われる時期ですが,アジアイトトンボよりほんの少し遅れて出現するようで,やはり春一番に羽化するトンボの一つといえます.西区の観察では,4月下旬にはもう池面を飛んでいます.以後10月頃まで連続的に観察でき,アジアイトトンボのように夏に一時的に姿を見かけにくくなるというようなことはありません.

 個体数は春から初夏にかけてが最も多く,6月下旬には,午前中に各地の池で多数の個体がいっせいに交尾しているすがたが観察できます.交尾の継続時間はかなり長いらしく(石田他1988),そういう状態に出くわすと,交尾していない個体を探す方が難しいほどです.交尾は午後に見られることもありますが,その例は比較的少数です.

 交尾が数多く見られるのに対して産卵は意外と見られません.これは,多くのイトトンボ類が連結した状態で産卵するのに対し,本種はメスが単独でひっそりと産卵するせいかも知れません.産卵はヨシの茎や水面に広がったスズメノヒ類の茎など,抽水植物に産みつけることが多いようです.

前ページへ 目次へ 次ページへ