ムカシトンボ科  Epiophlebiidae Muttkowski, 1911

 ムカシトンボ科の種は,日本特産種のムカシトンボ Epiophlebia superstes (Selys, 1889) とインド,ネパールに分布するヒマラヤムカシトンボ Epiophlebia laidlawi Tillyard, 1921,そして最近中国黒竜江省で発見された Epiophlebia sinensis の3種だけである.ヒマラヤの産地は近づきにくい山中にあるので標本が得にくく,また生態学的研究にもほとんど手がつけられていない.中国の産地は日本と類似の環境であるという.一方日本のムカシトンボは,山に入ればすぐにその姿を見ることができ,分布も広い.それ故本種は,日本の研究者により非常によく研究されており,形態学的研究,発生学的研究,生態学的研究など,多数の文献が,日本語または英語で存在する.ムカシトンボの研究に関しては,日本はもっとも優位に立場に立てる条件を備えている.

 ムカシトンボは源流域に棲んでいて,流畔に生えているフキやジャゴケに産卵する.よって源流域に産卵のために植物が生えていることが生息の必要条件となる.一般的に源流域の水温は低く,また曝気されることが多いので,溶存酸素量も高い.ムカシトンボの幼虫の腹側は石のカーブに沿って曲がるようになっていて,小さな幼虫は写真のように石によくくっつく.おそらくこういったところで,カゲロウやカワゲラの幼虫をつかまえて生活しているものと思わる.幼虫期間は非常に長く,飼育によると5〜8年といわれている.


図1.ムカシトンボの生息環境と幼虫.

図2.ムカシトンボの産卵.ジャゴケの葉やフキの茎に産卵する.



ムカシトンボ科 Family Epiophlebiidae
059. ムカシトンボ Epiophlebia superstes


<< 前ページトンボ成虫標本箱リスト次ページ >>