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No.700. ハッチョウトンボの観察.2019.6.25.

今はトンボの端境期で,春のトンボが姿を消し,夏のトンボの出始めの時期です.この時期が最盛期のトンボの一つにキイロサナエがあります.今日はそれを見に行く予定でした.しかし現地に着くと,今年は発生数が少ないのか,パラパラとまばらにしかオスが止まっていません.トンボは,ある年突然数が少なくなることがあるので,あまり気にしないようにしたいですが,ちょっと心配ではあります.

▲今日の観察予定だったキイロサナエのオスたち.

キイロサナエがいたすぐ横の流れの畔で,未熟なアキアカネが草陰に止まっていました.数は結構いて,今が羽化期のようです.近くの休耕湿地で幼虫をすくってみると,たくさんはいりましたので,ここから羽化したのでしょう.

▲草陰に入り込んで休息するテネラルなアキアカネのオス(上)とメス(下).

今日のもう一つの目的に,ホソミオツネントンボの幼虫採集があります.この春に紹介したように,たくさん産卵していたところがあるので,ここで幼虫を採集しようというわけです.ホソミオツネントンボの幼虫はどういうわけかいつもあまり網に入らないのですが,今日もまたその通りになりました.小一時間すくって,やっと1頭という感じでした.ネキトンボやショウジョウトンボやギンヤンマの幼虫がたくさん網に入ったので,これらに捕食されてしまったのかも知れません.

▲ホソミオツネントンボの幼虫.

この幼虫,尾鰓がふぞろいです.おそらく失われて再生してきたものでしょう.他の捕食者に食いつかれたのかも知れません.アオイトトンボに似ていますが,尾鰓が違います.また大きさは,アオイトトンボの約半分しかありません.成虫の大きさに比べて幼虫がかなり小さいような気がします.

ということで,いちおう採れはしたものの,なんとなく消化不良の感じです.池ではショウジョウトンボが元気に飛び回っており,コフキトンボも少しだけいました.

▲ショウジョウトンボのオス.
▲コフキトンボのメス.

ということで,まだ時間がありますし,端境期に最盛期が重なる数少ないトンボ,ハッチョウトンボを見に行くことにしました.このハッチョウトンボ,時間的にもお昼前で,ちょうど産卵時間帯になっていました.ほとんど待つことなく4,5回の産卵を観察することができました.写真とビデオに記録しました.

▲ハッチョウトンボのオスとメス.

ハッチョウトンボは1m間隔くらいで止まっていて,それが縄張りの大きさのようです.他のオスが入ってくると,目にもとまらぬ速さでぐるぐると飛び回って追い払います.そんなとき,メスが入ってくると,それを捕まえて交尾します.交尾は十数秒と非常に短時間です.

▲ハッチョウトンボの交尾.
▲交尾が終わって,放されたメス.しばらく静止するのが普通である.左後翅がちょっと変?
▲少し産卵行動を取ると,パッと止まって,しばらく静止する.
▲また産卵を開始する.
▲また止まる.
▲また産卵再開.
▲オスは飛んだり止まったりして警護する.

もう一つ別のカップルでは,オスがやたらにメスに接近して警護しました.このカップルは交尾の写真が撮れませんでした.交尾が終わってオスがメスを放した後,このオスはメスの後方でホバリングし,その後飛んでいるときも止まっているときも,接近して警護活動を続けました.今度はそういったところを記録してみました.

▲交尾が終わってオスがメスを放したところ.オスはメスが気になって仕方ないのか,離れない.
▲産卵を始めたが,上空でオスが見まもっている.
▲産卵を始めても,近距離を飛び回るオス.

メスが産卵を続けていると,やがて他のオスに見つかってしまいます.オスはメスのそばに付き添いながらも,まわりのオスを追い払いにかかります.メスは素知らん顔で産卵を続けます.まるで,「私の産卵の邪魔をしないように,交尾オスさんしっかりと他のオスを近づけないようにしてね.」と言っているようです.

▲交尾オスが頑張ってたのオスを追い払っている間に,悠々と産卵を続けるメス.

しかし,オスがたくさんいる状況では,1頭のオスの力だけでは,次々にやって来る他のオスたちを追い払うことはできません.このメスもとうとう他のオスに捕まり交尾を強要されてしまいました.最初の交尾オスくんの努力は最後までは報われませんでした.

▲上と同じメスが,産卵中に他のオスにつかまり交尾をした.
▲その後も産卵を続けたメス.

交尾直後のオスの静止がもっとも受精率が高いので,後半の卵は,2頭目のオスの子孫が大部分でしょう.しかし,この産卵は短時間で終了し,メスは湿地横の草むらに止まりました.ただ,やたらと腹部を曲げて,なにやら違和感を感じているような動作を続けました.

▲腹部を曲げて何をしているのだろうか,産卵が終わった上のメスである.

こんな感じで,中身は濃かったですが,時間的には40分ほどの観察でした.ホソミオツネントンボの幼虫をすくっている時間の方が長かったような気がします.ところで,まだ正午過ぎです.とにかく腹ごしらえをして,午後は,これもこの端境期に繁殖最盛期があって,ちょうど午後に産卵するモートンイトトンボを見に行くことにしました.

▲モートンイトトンボのオス.
▲モートンイトトンボの成熟メス.

慎重に湿地の草の間を探しましたが,産卵しているらしいメスの姿はありませんでした.ただ何かのイトトンボが次々に羽化しているのが目に付きました.アジアイトトンボのように見えましたが,写真を撮ってみると,ホソミイトトンボでした.

▲ホソミイトトンボの羽化直後のオス.

そこにたくさん居たものを観察すると言う鉄則に従って,ホソミイトトンボの幼虫をさがしてみることにしました.ホソミイトトンボの幼虫は,出現期間が短いために,うまく採集することが難しいイトトンボです.網を入れてみると,案の定,ホソミイトトンボが入りました.この幼虫も非常に小さく,モートンイトトンボと変わりないほどです.十数ミリの体長しかありません.

▲ホソミイトトンボの幼虫.アジアイトトンボによく似ている.

ということで,700回目のブログは,目的外の成果があった一日の報告でした.

No.677. 成虫越冬三種そろいぶみ.2019.4.21.

今日は朝から雲が出ていて,あまりパッとしない天気でした.そこで家でいろいろなことをしていますと,だんだんと日差しが出てきました.空には薄雲がかかっており,太陽の力も弱く感じられますが,気温も上昇し,地面には影ができるくらいになっていました.こうなると,もうじっとしていられません.近くの定点観察池に,成虫越冬種,特にオツネントンボの活動を見に行くことにしました.

▲ホソミイトトンボのオス.芽吹いた蘆の葉に止まっている.

この池は,3月の下旬に訪れたときには,大きく水を落としていました.先日のぞいたときにかなり水位が回復していたので,成虫越冬種なら来ている可能性があるということで,ここを選びました.昨年は何も見つけることができなかったのですが,例年であればどれかの成虫越冬種が見られます.池にはカンガレイやヨシの枯れた茎や葉が浮かんでいて,オツネントンボやホソミイトトンボに好適な産卵基質を提供しています.ヨシはまだ水面から10cmほど芽を伸ばしているだけでした.池に降りると,トンボが飛ぶ影が見えました.何か来ている,と,辺りを見回しますと,ホソミイトトンボが止まっていました.さらにすぐ横に,ホソミイトトンボの交尾ペアがいました.

▲ホソミイトトンボの交尾.11:06.

これは産卵しているペアもいるかも知れないと思い,池の周囲を歩いて探しました.ホソミイトトンボは池の一角にほとんど集中して集まっていました.と,足下をタンデムペアが飛びました.慎重に追いかけて,産卵を観察しました.

▲あちこち飛んで移動しながら産卵を続けるホソミイトトンボのペア.
▲上から見ると,まわりの色と同化して,なかなか見つけにくい.

最近動体視力が落ちてきたのか,飛び立ったペアがさざ波立つ水面を飛ぶと,まず間違いなく見失ってしまいます.上の写真ではっきりしましたが,上から見ると本当に見にくくなります.しばらくじっとしていると,産卵しているペアが2組いることが分かりました.

▲2組しかいないがいちおうグループ産卵ということになる.

ホソミイトトンボのようなオスが直立に近い姿勢をとることを,歩哨姿勢というそうです.まわりの敵を警戒して被食を避ける効果があるそうです.さらに,この姿勢は,他の産卵ペアを誘引する効果もあって,上の写真のようにかたまってグループ産卵することが多いようです.確かに観察していると,ペアが偶然で会うと,絡むように飛んで同じ場所で産卵しようとする行動が見られます.

▲歩哨姿勢をとらずに産卵することもある.ホソミイトトンボ.
▲産卵は12:30位まで見られた.

ホソミイトトンボを観察していると,オツネントンボとホソミオツネントンボが飛んでいるのを見つけました.どちらも来ているのですね.今日のねらいはオツネントンボですので,ホソミイトトンボにはこの辺でお別れし,オツネントンボを探しに,また池の周囲を歩いてみました.そうすると,ホソミオツネントンボの産卵に出会いました.

▲ホソミオツネントンボの産卵.
▲産卵は長続きしなかった.

ホソミオツネントンボは,通常,池に浮かぶ枯れ茎などには産卵せず,植物体の水面より高い位置に産卵をします.特に岸から水面に被さるように伸びる葉や茎が好きです.この池にはそういった環境があまりないので,毎年ホソミオツネントンボはいても数が少ないのです.ましてや産卵はなかなか見られませんでした.今日は写真のようなところで産卵していました.しかし長続きせず,別の場所を探すように飛び去ってしまいました.

結局これ以外は何も見つからなかったので,また元の場所に戻りました.すると,少し向こうにオツネントンボが単独で産卵しているのを見つけました.

▲オツネントンボの単独産卵.

成虫越冬三種がともに同じ池で同じ日に産卵しているのを目撃することは,めったにありません.いてもそのうちの2種であることが多いのです.特にこの池は,水面上で産卵するホソミイトトンボとオツネントンボはよく見かけるのですが,ホソミオツネントンボは,今までオスが単独で飛んでいるといった程度でした.

このオツネントンボ,アメンボか何かに驚いたのか,飛んで,岸近くの枯れ茎に止まりました.

▲オツネントンボのメスの静止.

すると,それを見ていたホソミオツネントンボのオスが,このメスに飛びかかりタンデムになろうと試みました.オツネントンボのメスは,翅を大きく広げて,タンデムを拒否しました.

▲オツネントンボのメスにタンデム態を強要しようとするホソミオツネントンボのオス.

その後,このオツネントンボは姿が消えました.ひょっとしたら,下の写真のオスに見つかって連れ去られたのかも知れません.ホソミイトトンボはとっくに産卵を止めているようですし,今日はこの辺で終わることにしました.トンボシーズンは,やはり春に成虫越冬種の活動を見て始まるのが,一番すっきりとしますね.

▲オツネントンボのオス.オスは1頭だけ,最初からホソミイトトンボに混じって飛んでいた.

あと1週間ほどして,水生植物が芽吹いてきたら,もっとたくさんの成虫越冬種が集まってくるかも知れません.いやまったく家から近い観察地は楽でいいです.次はビデオを回します.

No.665. トンボノートについて

トンボに関する日々の情報発信の基地として,2019年から,この「トンボノート」を始めることにしました.トンボノートは大きく3つのカテゴリーからなっています.一つは「コラム」です.これは第三者の発表した興味深いトンボ情報について解説するカテゴリーです.二つ目は「エッセイ」です.これは,私の考えや経験を中心に,どちらかといえば,主観的なトンボの世界を描くことにしています.三つ目は「観察記」です.これはトンボ歳時記の続編に相当するものです.

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それでは今後ともよろしくお願いします.