No.622. タイワンウチワヤンマの観察.2018.8.18.

今日も気温は低めで快晴の予報.そこで,ほぼ毎年行っている淡路島へ出かけてきました.いちおうの目的はベニトンボの進入調査ということにしていますが,これは偶然に左右されますので,確実な目的はタイワンウチワヤンマの産卵観察です.タイワンウチワヤンマは,わざわざ淡路まで出かけなくても見ることはできます.ただ,産卵の撮影が目的の場合,場所的な撮影しやすさ,産卵に来る可能性などを考慮すると,淡路島へ行く価値は十分にあります.ただ,明石海峡大橋だけは渡らねばなりませんので,片道940円の有料道路代だけは負担する必要があり,これがちょっと痛い.後は地道を走ります.

朝9:00ころに目的の池に着き,辺りを見回しましたが,ベニトンボはおろか,ウスバキトンボ以外何もいません.今日は涼しく,気温は25度で,十分だろうと思います.本当に今年は,どこへ行ってもトンボがいない変な感じです.その後,ベニトンボが来るかもしれない池をいくつか見てみましたが,不発でした.これは想定内.そして,10時ころにタイワンウチワヤンマが集まる池に行きました.ここにもベニトンボが来る可能性はありますので,いちおう周辺を含めて探索しました.もちろん?いませんでした.

タイワンウチワヤンマのオスは,枝のてっぺんに水平に止まります.そしてときどき飛び立って,縄張り内にメスが来ていないか探索します.産卵基質である水面に浮かぶ植物の茎などのあるところに縄張りを持ち,そこを丹念に見て回っています.

▲枯れ枝の先に止まる典型的な静止姿勢.4本の脚で止まるのが定位置.

▲正午ころの撮影.今日は比較的涼しいせいか,腹部挙上姿勢を取る個体がいなかった.

▲メスがやって来るところへ陣取っている.このすぐそばに産卵メスも止まった(下の写真).

ということで,産卵に来そうな微小環境を見つけ,日陰に腰を下ろして待つことにしました.シオカラトンボがいっぱい飛んでいて,産卵もやっています.これは後で紹介するとして,10:28,最初のメスが入ってきました.落ち着きがありません.ウチワヤンマのようにどっしりと腰を落ち着けて産卵してくれたらいいのですが,オスがたくさんいることもあり,動き回っての産卵です.

▲産卵にやって来たメス.草陰で産卵しようとするが,動き回るオスにすぐ見つかってしまう.

▲産卵に入ってきてすぐの写真.まずはオスのことを気にせず開けたところでホバリング.

オスに追われながら,ときどき隠れるようにして打水し,またオスに見つかって,という感じの繰り返しです.そしてとうとうオスに捕まってしまい,交尾に至りました.タイワンウチワヤンマの交尾は飛びながら行われ,移精行動,交尾,そして解放と,わずか数秒で終わってしまいます.ピントが来てませんが,とりあえずその過程を並べておきましょう.以下の4コマはわずが2秒の出来事です.

▲上左から,移精行動,交尾への移行,交尾,とこの間わずか2秒!.

▲交尾から解放されたメスは,オスから逃げるように移動して,産卵を再開する.

その後もメスは入ってきました.全部で5回くらいだったかと思います.記録できたのは,4回目の個体だけでした.

▲この個体も例に漏れずオスに追われながらの産卵である.

▲ほんの少しの間,オスに見つからない時間が持てた.ホバリングして打水位置を確かめる.

▲打水するとすぐに止まる.オスが多いときによく見られる行動である.数回止まった.

▲再び飛んで,産卵を再開する.

もう少しオスの個体数が少なければいいのですが,オスが少ないとメスも少ないのでしかたありません.ただ,オスがメスを連れ去らず,その場ですぐ解放してメスが産卵を始めるので,これだけは助かります.最後は顔のアップで締めくくっておきましょう.

▲タイワンウチワヤンマのメスの顔.

さて,シオカラトンボが今日はたくさんいました.シオカラトンボは8月下旬から9月中旬くらいまでがもっとも個体数が多くなる時期です.テネラルな個体もあちこちで見られ,これらはおそらく二化目の個体ではないかと思います.飼育によると,シオカラトンボの卵期間は7日,幼虫期間は55日というデータがあり(関西トンボ談話会,1984:近畿のトンボ),十分二化の可能性はあります.今日も目の前で5回くらい産卵していました.そのうちの成熟したメスと,若いメスの産卵を紹介しておきます.

▲成熟したシオカラトンボのメスと交尾する.

▲シオカラトンボのメスは,成熟すると,無彩色的な色になる.

▲少しの間打水をすると,ピタッと止まってしばらくそのままの状態でいる.

▲再び産卵を再開する.

▲また止まる.このメスは数回止まった.

このメスは写真のように産卵途中で何度も止まります.これはオスが多いためにオスに干渉されたくないがための行動だと私は解釈しています.上のタイワンウチワヤンマのメスもよく止まりました.ずっと以前カオジロトンボを観察したときもそうでした.打水してすぐに止まります.オスはメスが止まってしまうと,どうやらメスを見失うようです.飛び方でメスを判別しているのでしょうか.ギンヤンマなどは,止まって産卵しているメスを簡単に見つけてしまいます.飛翔産卵と静止産卵でオスの対処の仕方も違うのかもしれません.

▲産卵を警護するオス.シオカラトンボの産卵.

▲メスの動きをじっと見守って寄り添う.

▲まだ若いので,体色が麦わら色.こちらは多分二化目の個体であろう.

▲打水の瞬間.水をすくい上げるようにして前方に飛ばそうとしている.

▲上の写真の尾部拡大.水が先端から丸くちぎれていこうとしている.水滴中の白いもの(矢印)は卵か?.

さて,今日どこでも個体数の多かったのがウスバキトンボです.精霊トンボという俗称があって,精霊を運ぶトンボなどという話を聞いたことがあります.また盆トンボという俗称もあるくらい,お盆のころに個体数が激増します.まさにその名の通りで,成熟した腹部の赤い個体から,未熟な群飛まで,たくさんのウスバキトンボがいました.連結したり,交尾したり,産卵したりしないかと待ちましたけど,観察はできませんでした.ウスバキトンボの産卵には意外とお目にかかれないものです.

▲腹部の背面が赤くなっているウスバキトンボのオス.

▲未熟なウスバキトンボ.

▲急旋回しようとしているところ.頭に対してからだがねじれている.

さて,今日は淡路まで行って普通種ばかり観察してきたわけですが,海岸沿いを涼しい風に吹かれて車を走らせると,とても心地よい良いドライブができました.タイワンウチワヤンマの産卵観察という成果もありましたし.そういえば,今朝,エンマコオロギの鳴き声を聞きました.フィリリリリリリ・・・,もう秋がすぐそこまで来ているようです.

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