まず私の観察体験からお話をしましょう.2024年10月25日,家族旅行で宮城県の松島を訪れたときのことでした.車で鳴瀬奥松島ICを下りたのが9時40分ごろでした.そこから鳴瀬川右岸に沿って大高森の方へ行くことにしていました.下りるとすぐに,鳴瀬川の方から道路を横断するように無数のアキアカネのタンデムが道路を横切っているのに出会いました.
ところが,行けども行けどもこのアキアカネのタンデムの大群は道路を横切っていきます.車で走っていると,次々と車に当たってしまうほどです.もっとも,多くはうまくよけて飛んでいました.何度かトンボが車に当たる音がしました.後で気づいたのですが,車には1ペアと1頭のアキアカネが貼り付いていました.


大高森の駐車場に車を止めたとき,あちこちにトンボが止まっており,少し向こうでは集団で摂食飛翔をしていました.ここのトンボは,多くが単独状態でした.種を確認すると,アキアカネの他にノシメトンボが混じっていましたが,この集団飛行に混じっていたかどうかは分かりません.




したがって,この四角柱を地面 (海面) に投影した長方形EFGHに投影されるアキアカネも約804ペア,四捨五入して約800個体と推計できます.ただしこの推計は,写真が撮られている位置より高くを飛んでいる個体が切り捨てられている点に注意が必要です.投影されている平面で考えると,21m2あたりに1ペア (=(400X42)÷800) がいるという密度になります.これは現場での実感に近いように感じます.


ところが,行けども行けどもこのアキアカネのタンデムの大群は道路を横切っていきます.車で走っていると,次々と車に当たってしまうほどです.もっとも,多くはうまくよけて飛んでいました.何度かトンボが車に当たる音がしました.後で気づいたのですが,車には1ペアと1頭のアキアカネが貼り付いていました.

図2.ロードキル個体.左は筆者の車のヘッドライトに挟まった個体.これらの個体がたくさん道路脇に落ちていた.
さらに鳴瀬川河口を右に曲がり,野蒜海岸沿いに走りましたが,ここでもアキアカネの集団移動は続いていました.この集団は,海を渡って飛んできているように見えました.どこから飛んでくるのか不思議でしたが,地図で確認すると,野蒜海岸の約20kmあまり東方には牡鹿半島が位置しており,ここからの可能性が考えられました.
図3.鳴瀬奥松島ICから大高森へのルート上で観察したアキアカネの集団移動.国土地理院タイルに観察場所やトンボの飛行方向示す赤矢印を記入し掲載.
この状態は大高森登山口近くの駐車場に着くまでずっと続きました.Googleでルート検索すると,9.8kmとなります.トンボの飛ぶ方向は決まってみな同じ方向です.図3の地図に書いている赤矢印がだいたいの方向になります.車に当たって死亡した個体は,10mに1頭として,約10kmで1,000頭は下らないでしょう.大高森の駐車場に車を止めたとき,あちこちにトンボが止まっており,少し向こうでは集団で摂食飛翔をしていました.ここのトンボは,多くが単独状態でした.種を確認すると,アキアカネの他にノシメトンボが混じっていましたが,この集団飛行に混じっていたかどうかは分かりません.

図4.大高森の駐車場でたむろするアキアカネたち.タンデム態のペアもいるが,多くは単独個体で,静止しているものもいる.詳細は ここをクリックしてオリジナル写真 (6.33MB) を見るとよく分かる.
この後,大高森の展望台 (標高約100m) に登ってみました.ここでもこの山を越えて次々とアキアカネが頭の上を通過していきました.
図5.大高森展望台 (撮影地点A) から西方に位置する松島を望む.白矢印の位置にアキアカネが写っているが,この写真では解像度が低くて判別できない.ここをクリックしてオリジナル写真 (2.77MB) をさらに拡大して確認して欲しい.
これだけの状況を見せられると,一体全体でどれくらいのアキアカネが飛んでいるのか知りたくなります.図6の写真は撮影地点Bで,海の方 (東の方) に向けて撮ったものです.ここには268ペアのアキアカネが写っています.撮影はフルサイズ,2450万画素のデジタルカメラに,対角画角8.2度となる300mm望遠レンズで撮っています.この写真をもとに,少し数学的に解析し,個体数を推計してみましょう.
図6.11:05,撮影地点Bで撮影.この写真をもとに個体数の推計をやってみる.この写真は300mmレンズ (対角画角8.2度) で撮影されており,トリミングはしていない.他と同様白い矢印の先にアキアカネが写っている.詳細は ここをクリックしてオリジナル写真 (11.2MB) をさらに拡大して確認して欲しい.灰色のモヤモヤはジェット機の排気である.
さてまず最初に,図6には撮影地点からどれくらい遠方のアキアカネまでが写っているのかを推計してみます.図6のアキアカネと思われる「黒点」のうち最も小さいものを選んでみると,それは5ピクセルほどでした.簡単なレンズの結像図形を使って,レンズからこの最遠のアキアカネまでの距離を計算してみると,約400mとなりました (図7参照).つまり約400m先のアキアカネまで写っているということになります.
図7.カメラの能力から見て,図6の写真がどれくらいの距離までのアキアカネをとらえているかの推計.アキアカネはタンデムで飛んでいるが,多くがこちらに対して斜めの向きで飛んでいるので,1頭の体長で計算した.
アキアカネは空間内を飛んでいます.そこで次に図6を立体的にとらえてみると,写っているアキアカネは,図8の四角錐OABCDの空間内のものであるということになります.これをそのまま地面 (海面) に投影すると三角形になりますので,この四角錐を底面をABCDとし高さが同じ四角柱に拡張すると,その体積は3倍となります.単純に個体数も3倍すると,268X3=804となります.したがって,この四角柱を地面 (海面) に投影した長方形EFGHに投影されるアキアカネも約804ペア,四捨五入して約800個体と推計できます.ただしこの推計は,写真が撮られている位置より高くを飛んでいる個体が切り捨てられている点に注意が必要です.投影されている平面で考えると,21m2あたりに1ペア (=(400X42)÷800) がいるという密度になります.これは現場での実感に近いように感じます.

図8.図6の写真がカバーしている範囲を立体的にとらえて,一定の地面 (海面) 上にどれくらいのアキアカネのペアがいるかを推計する図.望遠レンズは300mmで対角画角は8.2度である.
次にアキアカネの飛ぶ速度を推計してみます.これは砂浜を真横に飛ぶ同一個体の連写写真がら推定してみましょう.
図9.アキアカネのペアの移動速度を推計する.毎秒6コマの連写写真の,連続する2コマを合成したもの.アキアカネのペアの長さを8cmとすると,1/6秒間で約30cm進んでいることになるので,移動速度は1.8m/秒となる.これは砂浜の上を飛ぶアキアカネのペアで,写真の右側が海,左側が陸である.
アキアカネは陸に向かって一直線に飛ぶわけではありません.時には波打ち際に平行に飛んだり,止まって交尾したりしているペアもいます (図10).図9は,そういう意味で,海の方から陸に向かって飛ぶ最速の状態といえるでしょう.










