No. 867. 薮の中のヤンマたち.2022.8.8.

ここ数日間の不安定な天気を理由に,しばらくトンボ観察を休止していました.雷が激しく鳴ったり,雨が急に降ってきたり,まるで熱帯のスコールのようでした.写真は積乱雲の雲底です.こういうところから竜巻が降りてくるんでしょうね.この雲が自宅の方にやってきて雨を降らせたのですが,ちょっと怖かったです.


▲積乱雲の雲底が見える.これが襲ってきた.撮影地点は今晴れている.8月5日.▲

さて,やっと安定した天気が続くという予報が出ましたので,今日もまた「薮の中にヤンマを探す」を実行しました.暑い日中は,薄暗い林の中でトンボを探すのが一番いいですね.まず迎えてくれたのはオニヤンマでした.8月もお盆が近くになってくると,オニヤンマの繁殖活動が本格化します.見つけたのはメスでした.ちなみに今日一番最後に見つけたのもオニヤンマ,こちらはオスでした.一緒に紹介しておきましょう.


▲今日の一番最初と最後に出会ったトンボ,オニヤンマである.上がメス下がオス.▲

オニヤンマのメスを撮影していると,大きな黒いトンボが目の前に飛び込んできました.ぶら下がれそうな枝を物色するように飛んでいます.こういうときは焦らず固まった状態で見ておくのが一番です.止まりました.どうやらヤブヤンマのメスのようです.


▲ヤブヤンマのメスが入ってきて止まった.▲

写真を撮っていると,うっとうしく感じたのか,ちょっと飛んで別のところに止まりました.より低いところに止まったのでラッキーでした.このヤブヤンマのメスの目もガラス玉のように輝いています.ただし色彩はやはり緑青色をしています.先日の淡緑色のガラス玉複眼とは違いますね.


▲止まり直したヤブヤンマ.複眼に傷がある.オスにやられたか?.▲

この,相手の方から近づいてきたヤブヤンマに出会って,今日は何かいいことがあるような予感がしました.最近乱視がひどくなって,枝に止まるヤンマを見つけるのに苦労します.しばらくは何も見つかりませんでした.が,折れた木の枝先に小型のヤンマが止まっているのが目に入りました.これは,...予想通りマルタンヤンマのオスでした.


▲折れた枝先に止まるマルタンヤンマのオス.▲

マルタンヤンマのオスは,背中側から撮影すると,青い目に焦げ茶色の体という感じで,もう一つパッとしません.胸側のブルーの淡色条が写るように横や腹側から撮るのがいいのですが,位置的にうまく撮れません.何枚も撮っているうちに,嫌気がさしたのか,飛び立ちました.しかし弱々しく飛んですぐ近くに止まりました.ちょうど腹側が見える位置で,ブルーと茶色のコントラストがうまく表現できました.


▲この茶色と青の色彩が多くのトンボ屋を虜にする.▲

マルタンヤンマはストロボに対して結構反応するようで,また飛び立ちました.ストロボに反応して飛ぶというより,滅多に出会えない相手なので,私が殺気を出しまくっていたのかもしれませんね.見逃したかと思いましたが,よく探すと止まっている位置を見つけることができました.しかし今までより少し高く,写真には撮りにくい位置です.


▲ここにはかなりの時間止まっていた.▲

これで今日来た甲斐があったというものですが,一つ見つけるとまだいるのではないかと思うのが人の常です.少し場所を変えて,さらに探索を続けました.なんと,嘘みたいな話ですが,2頭目がいました.今度はちょうどいい高さに止まっています.


▲ちょうど目の高さ当たりに止まっていたマルタンヤンマのオス.▲

ただこのオスすぐに飛び立ってしまいました.やはり私の殺気が相当なものだったのでしょう(笑).人間が近づくと写真のように腹部を曲げる行動を見せました.最初のオスも同じです.こうなると飛び立ちやすくなるのでしょうか? マルタンヤンマの複眼のブルーは,ヤブヤンマオスの水色とも,ネアカヨシヤンマオスのマリンブルーとも違う,純粋な青という感じです.


▲マルタンヤンマの頭部と胸部の拡大.▲

このマルタンのオスが飛び立ったとき,入れ替わるように別のヤンマが降りてきました.こちらに目がいってしまったために,このオスは見逃してしまいました.降りてきたヤンマは少し先の方に止まりました.なんとマルタンヤンマのメスでした.今日は相手の方から近づいてくる!


▲マルタンヤンマのメス.胸側の黄緑が美しい.▲

このメスはいくらストロボを炊いてもびくともしません.メスは鈍感なのでしょうか? 先日出会ったメスは近づいたら飛んで逃げてしまいました.やはり個体差でしょうね.それにしてもオスと入れ替わりでメスが入ってくるなんて,恐ろしいくらい今日はついていますね.もう私は死ぬのではないかしら,と思うぐらいです(笑).

マルタンヤンマは,林の中に止まっているときでも,時々移動していると感じましたので,また最初のコースに戻ってみることにしました.最初に出会ったオスのところに行ってみましたが,もう姿はありませんでした.やはりじっと休憩しているだけではないようです.最初と同じコースに戻り歩き始めますと,なんと,またマルタンヤンマのメスが見つかりました.


▲2頭目のマルタンヤンマのメス.▲

このメスは,カメラをいじっている間に逃げてしまいました.マルタンヤンマはヤブヤンマなどとは違い,少し敏感なようですね.

知らぬ間に2時間以上経っていました.この後は,最初に出会ったヤブヤンマが少し移動してまだ止まっていたのと,最初に紹介したオニヤンマのオスに出会ったのが最後でした.そうそう,一番最初のオニヤンマのメスは最後まで止まったままで動いていませんでした.なおマルタンヤンマを探している途中,1頭のミルンヤンマを見ました.


▲最初に飛び込んできたヤブヤンマのメスは,ほぼ同じ場所にいた.▲


▲ミルンヤンマのメス.まだ未熟な感じである.▲

今日は2時間半ほどの薮歩きでしたが,成果は十分あったようです.今日はここまで.

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