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No.767. 兵庫のトンボ20年.2020.11.28.

今日ふと気づいたのですが,今年の秋,家の周りでコオロギが鳴きませんでした.そういえば,去年も鳴かなかったような気がします.以前は,8月も終わりになると,「リリリ・・・」と家の横や裏で鳴いていて,夏の終わりを感じさせてくれたものでした.なぜだろうと色々と考えてみると,ひとつ思い当たることがありました.

3年前,家にシロアリが出て,その駆除を依頼したことがあったのです.まだ家を修理するほどではなく,薬剤を注入するだけで処理が可能と言われ,その処置をお願いしたのでした.考えてみればその年からコオロギの声を聞いていないような気がします.薬剤の種類まで聞いていなかったのですが,ネオニコチノイド系の薬剤の可能性がないとはいえません.以前「コラム」で,シロアリ駆除の薬剤が土中を浸透し,植物・花粉を介してミツバチが減少した話を書きました.

家の周りでコオロギが鳴かなくなった原因がこれだとすると,なんとも複雑な気分になります.トンボなど昆虫の減少を望まない私が,その減少に一役買っていたことになるからです.でもそれ以来翅アリが出ていないことを考えると,薬剤注入で家が守られていることは確かなようです・・・.

お風呂に入りながら考えていると重い気分になって,気持ちは自分のトンボ観察をふり返ることに向いていきました.トンボ観察に多くの休日を費やす日々を送るようになってもう32年が過ぎました.最初のうちは採集・標本作製・分布記録の整理などが中心の日々でした.やがて地元を中心とした一通りのトンボたちに出会い,生息環境の把握もでき,種の区別もできるようになりました.それらを活かして次は生態や分布の本格的調査を行い,著作活動に励みました.そして並行してトンボを写真やビデオに記録するようになりました.これがちょうど21世紀を迎えたころです.

2008年から始めた「トンボ歳時記」は,トンボを通して季節感を表現することをねらいとしてきました.でも,今,トンボを見て季節を感じる人はどれほどいるのでしょうか.アカトンボでさえ身近でなくなってしまった現在,トンボは季節感を表現する動物になるのでしょうか.

気象庁は令和3年1月から「生物季節観測」の対象を大幅に減らすことを公表しています.昭和28年から始まったこの観測は,令和2年1月段階では,身近な動植物57種を対象にしていました.今後残るのは,「アジサイの開花,イチョウの黄葉・落葉,ウメの開花,カエデの紅葉・落葉,サクラの開花・満開,ススキの開花」の6種類9現象だけになるようです.見てお分かりのようにすべて植物です.「動物季節観測においては対象を見つけることが困難」なことがその理由のようです.現在は「アキアカネ初見,シオカラトンボ初見」といったトンボも動物季節観測の対象になっています(以上気象庁のホームページ https://www.jma.go.jp/jma/press/2011/10a/20201110oshirase.pdf より)

トンボを専門に追いかけているアマチュアでさえ見つけるのが難しくなってきた昨今,気象庁の職員が仕事としてこれらを「正確に」行うのは,もう困難な時代が到来しているのでしょう.話はそれますが,この生物季節観測の項目の中に「エンマコオロギの初鳴き」というのがあって,心が痛みました.

毎日のようにトンボを追いかけて写真を撮ったりビデオを撮影したりしている私は,いったい何をしているのだろうと,ときどき考えることがあります.今までは深く考えることもなく「好きだから」というのがその答えでした.また観察してきたことの公表形式としては,論理的な文章を書くのはあまり苦になりませんので,今まではもっぱら生物学に基礎を置いた表現方法を用いてきました.ただ最近このための新しい情報を得ることに行き詰まりを感じてくるほどにトンボがいなくなりました.それを愚痴ると,私の妻も「もう止めたら?」と言ってくるぐらいです.

そんな毎日のなか,「私の中のトンボの季節感」を表現したくて,20年,正確には21年ですが,撮りためてきたビデオ映像を編集して,ビデオエッセイを作成してみました.創ってみるとどうしても論理的な構成になって,心情という感じが出にくいのですが,私の心がそういうつくりになっているということで納得しています.

40分という長尺になりました.気持ちを表現するためにBGMも入れることにしました.著作権処理された音源を持っているのでそれを使っています.長いので,暇なときに,一杯飲みながら見ていただければ幸いです.

ビデオエッセイ:兵庫のトンボ二十年の記録

動画に関する技術情報:YouTubeには公開していません.ホームページにもリンクは張っていません.また常用しているJW Playerも使用していません.videoダグを利用しているので,旧いブラウザ(HTML5より前)では動画が再生できません.当方は,Google Chrome ver87.0.4280.66,IE11.0.49 で動作確認をしているだけです.

No.766. 茶色のオオキトンボを見に… 2020.11.17.

今日もいい天気.そろそろオオキトンボも茶色になり始める季節.老熟したオオキトンボの色が好きで,これをビデオに収めようと出かけました.まず最初の池は水がなく,トンボはほとんどいませんでした.ナツアカネがパラパラといただけでした.と,そんな中に黒っぽいいトンボが…,シオカラトンボです.それも,まだ青白い粉を吹いていないオス!.これ,この数日のうちに羽化したのでしょう? この二,三日20度を超える毎日が続いており,その暖かさに誘われて出てきたのかも知れません.いずれにしても兵庫県では珍しい記録ではないでしょうか.

▲若いシオカラトンボのオス.この時期としては珍しく非常に遅い記録である.

ねらいのオオキトンボがいなかったので,二番目の池に行きました.池は水が少し落とされ,ここには来ていました.オオキトンボが二組産卵していました.今日は茶色のオオキトンボがねらいですので,止まっているオスを探しました.3頭ほどいましたが,まだ茶色と言うには少し早いようでした.あと10日くらい経てばいい色になるでしょう.

▲色が濃くなってきて赤味が増し,茶色に近くなっているオオキトンボのオス.

この池には少数ながらマイコアカネが生息しています.今日,まだ生き残っていました.顔面は青白さが消え,白くなっているオスです.

▲マイコアカネのオス.

この池からマイコアカネが姿を消さないうちに,繁殖活動の記録を撮っておかねばならないと感じました.来年また来ることにしましょう.あと,アオイトトンボが池の周囲を飛んでいたり,タイリクアカネが産卵していたりしていました.今日は汗をかくくらい暑かったです.

No.765. 散歩道のマユタテアカネ.2020.11.5.

今日は,小型三脚をつけたビデオカメラを片手に,秋の散歩としゃれ込みました.ただ歩くだけではつまらないので,毎年訪れる池の周辺の小径を歩くことにしました.今年は各地でトンボが少ないので,ここはどうだろうというのも一つのねらいです.行ってみると,マユタテアカネはそれなりにいました.ある意味ほっとしました.しかし,小径には,他のトンボが見当たりません.そこで,池に降りてみました.池では,キトンボが1頭,タイリクアカネが1頭,マユタテアカネが2頭,それぞれ活動していました.

太陽の日差しが強くなる11:30ごろ,遠くの方でキトンボが打水産卵を行い始めました.すると,目の前をキトンボの連結態が通り過ぎ,これも産卵を始めました.本当に一気に出てくるのですね.マユタテアカネも交尾態が飛翔し,コノシメトンボが水面を飛び始めました.服の上から太陽の温かさを感じるこの温度なのです,活動を始めるタイミングは.やがてマユタテアカネも産卵を始めました.

キトンボはあまりうまく撮れなかったので,今日はマユタテアカネの活動をまとめておきました.


兵庫県とその近隣のトンボたち:散歩道のマユタテアカネ

今日はアキアカネの姿がなかったので,また半月ほど経ったら来てみようと思います.