No.691. ヒメクロサナエの観察.2019.5.26.

先日クロサナエを観察に行ったとき,ヒメクロサナエはほんのちょっと早いような気がしていましたので,今日行ってみることにしました.クロサナエの時は9時ころにヒメクロサナエが産卵に来ていましたので,ちょっと早めに着くように早朝に家を出ました.

▲ヒメクロサナエのオスたち.下りてきては2,3分で樹上に上がっていく.

早く出た成果は特にありませんでした.でもヒメクロサナエたちは7時台には活動を開始していることが分かりました.気温は20度くらいになっていたようです.

9時を過ぎてから活動が活発になり,オスたちは時々樹上から下りてきては,上がるといった行動を繰り返していました.しかしよく見ていると,オスが下りてくるところは,だいたい3カ所でした.つまり決まったところへ下りてくるのです.個体識別ができないので,同じ個体が同じ所へ下りてきているかどうかは分かりません.そして今日産卵に来た4頭のメスは,このオスがよく下りてきて止まる3カ所で産卵をしたのです.つまり,オスはメスが産卵に来るところを的確に押さえているのです.

では,その3カ所の産卵を紹介しましょう.まずは10:40に産卵に入ったメスです.典型的と言ってよい産卵場所です.このメスは飛んでくると,ほとんど躊躇なくピタッと止まって,すぐに産卵を開始しました.産卵終了後は ,腹端をこするように体をくいっくいっとひねって飛び去ります.

▲石の上に止まって,水のないところに卵を置く,ヒメクロサナエの産卵メス
▲腹端からピンク色の卵が出てきているのが分かる.
▲放卵している腹端部の拡大写真.ピンク色の卵が押し出されるように生殖口から出てきている.
▲産卵が終わって,腹端を少し左にずらして体をひねった.

実は,この産卵場所のすぐ横の石の上に,すでに早朝,オスが来て様子を見ているのです.オスメスの飛来のタイミングが合えば,オスはメスをゲットできるんでしょう.本当にオスはメスが来るところをよく知っています.

▲上の産卵場所のすぐ横に下りてきてしばらく止まっていたヒメクロサナエのオス.

この産卵ポイントは,以前からメスがよく下りてくるところで,微小環境がメスを引きつけやすい形になっているのかも知れません.この場所には,この後すぐにもメスが産卵に入りました.しかしこちらは,私の近づき方が乱暴だったせいか,産卵を中断して飛び去ってしまいました.上のメスですが,産卵が終わって飛び立とうとしたとき,どういうわけか転がって落ちてしまいました.

▲産卵を終えて飛ぼうとしたが,飛べずに転がり落ちたメス.

次にメスが入ったのは11:40でした.ここは,私にはあまり好適な産卵環境ではないと思っていたところです.でも,オスはよく樹上から降りてきて,この周辺に止まるのです.

▲2カ所目の産卵場所近くに止まる,ヒメクロサナエのオス.
▲上のオスの止まっていたクレソンにつかまって産卵するヒメクロサナエのメス.11:40.

こんな格好をしてでも産卵するんですね.そしてオスは本当によく知っています.私が来ないだろうと思っていたところに,メスはきちんと産卵に来ているんですから.上の産卵場所のすぐ横に苔むす石があるのですが,そこにもオスがよく止まります.23日の写真ですが掲載しておきます.

▲このすぐ向かいに上のメスの産卵場所がある.2019.5.23.撮影.

さて,3カ所目が面白いところです.以前紹介したことがあるのですが,私の長靴の踏み跡に産卵に来るパターンです.上の2件と違って,泥の中に産卵をしています.ここには,オスが何度も下りてきます.また産卵はしませんでしたが,朝の時間帯に,2頭のメスがこの場所の上を低空で往き来し,いかにも産卵しそうな飛び方をしました.それはこんな場所です.

▲白矢印:産卵場所,黄矢印:下の写真のオスの位置,橙矢印:二つ下の写真のオスの静止位置.
▲靴の踏み跡の産卵場所に集まるヒメクロサナエのオスたち

この場所に産卵に入ったのは11:53でした.踏み跡の上を慎重に数回旋回した後,おもむろに着地しました.しかし腹端で探った感じが会わないのでしょう,すぐに飛んで,別のポイントで産卵を始めました.

▲この最初の着地点は腹端の触感でダメだったようだ.すぐに飛んで,着地点変更!.
▲私の座っているすぐ足下に止まって産卵を始めた.
▲位置を変えて横から撮影した.腹端からピンク色の卵が出て,泥に混じっていく様子が分かる.

この,卵を泥の中に置くというのは,典型的な産卵とちょっとスタイルが違うに見えます.でも卵を泥に混ぜてしまうという方が,石などの上に置くよりも,天敵から護りやすいように思えます.

さて,ヒメクロサナエの観察は12:00ころに終わりました.その間にクロサナエも2回産卵に来ました.こちらはビデオで記録しました.それでも,下りてきたオスの数は23日とは全然違ってかなり数が少なかったようです.またムカシトンボも複数やって来て,メスは産卵をしていました.今年はムカシトンボが本当に遅くまで活動しています.羽化数が多いのか,羽化が遅れたのか,...多分両方でしょう.

▲クロサナエのオス.

ここで源流域とはお別れし,帰りにちょっと平地の池をのぞいてみました.コサナエはまだ生き残っていました.ヤマサナエが活動を始めているようでした.オオイトトンボやクロイトトンボも活発に活動していました.その他クロスジギンヤンマ,ヨツボシトンボ,シオヤトンボなど,春のトンボもいました.気温は34度でしたが,春のトンボのくせに,結構頑張って日向で活動していました.

▲コサナエのオス.
▲コサナエのメス.もう黄色味はなくなっている.
▲ヤマサナエのオス.川で繁殖活動を行っていました.
▲クロイトトンボの交尾.キイトトンボらしい羽化殻が付いている.
▲小川で産卵しているオオイトトンボのカップル.

ということで,今年もムカシトンボ,クロサナエ,ヒメクロサナエと,春の源流域のトンボたちを観察し終えることができました.今日はここまで.

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