No.619. オナガサナエとコオニヤンマ.2018.8.1.

8月になりました.今年は梅雨明けが早かったせいか,7月がとても長く感じられました.通常なら8月になってから観察に行くトンボたちも,ほとんど7月中に観察を終えてしまいました.植物もとても季節が早く進んでいると聞きますが,トンボたちも同様な感じです.例年なら8月の7日前後に観察に行くオナガサナエとコオニヤンマを,今年は8月の初日に観察に行くことにしました.

オナガサナエもコオニヤンマも,朝早くから産卵します.また朝早い方がたくさん産卵に来るのです.そこで,現地到着を6:00に設定して出かけました.ほぼ予定通り着いて早速川に入りましたら,5分と経たないうちにオナガサナエが産卵に入ってきました.時刻は5:57’06″(最初の撮影コマ)です.

▲5:57:岸近くの草陰にはいって産卵を始めたオナガサナエのメス.

▲ほとんど同じ位置でホバリングして卵を落とし続けている.

▲背景が近いのでストロボの光がよくまわり,この最初の写真がいちばん色がよく出ている.

草陰に隠れるようにしてほとんど同じ位置で産卵を続けました.このオナガサナエのメス,顔を拡大してみるとまだ水滴がついていました.朝起きて露を乾かしきる前に産卵にやって来たようですね.それとも,飛んでいるときに,濡れた草などにぶつかったのでしょうか.翅の部分にも水滴がついています.産卵を終えたのは5:58’32″でしたので,約1分半産卵していたことになります.

▲オナガサナエメスの顔.よく見ると小さな水滴がいっぱいついている.

▲翅を拡大してみるとやはり水滴がついているのが分かる.

とても幸先のよいスタートを切ることができました.目標の半分が5分で完了です.過去にも朝早く来たことがありましたが,5時台は初めてでした.

ところで,川の様子がやはり先日の長期豪雨でかなり変わっていて,いつも産卵を待つこのポイントはどうかなと思っていましたが,杞憂でした.さて次を待ちました.6:20’58”,今度はコオニヤンマが入ってきました.先のオナガサナエの産卵場所とほとんど同じです.岸近くの草陰で産卵しています.

▲6:20:コオニヤンマが産卵にやって来た.岸近くの草陰で,先のオナガサナエとほとんど同じ場所.

▲ほとんどの時間,岸の方を向いてホバリングをしている.

▲翅が破れ,新鮮とはいえない十分成熟したコオニヤンマのメスである..

コオニヤンマはオナガサナエと違って,空中から卵を落とさず,卵塊をつくって打水するという産卵方法です.いつ打水するか分からないのでなかなかその瞬間を撮るのは難しいです.コオニヤンマも顔のアップをしてみましたが,こちらは水滴はついていませんでした.

▲打水した瞬間.ストロボでは止まらなくて少しぶれている.動きが速いのだ.

▲打水した波紋が広がっている.次の卵塊をつくり始めるのだ.

▲コオニヤンマのメスの顔.意外とすっきりとした感じの顔である..

さて,少し待ちましたが,次がやって来ません.到着したときから気になっていた,少し向こうに見える平瀬の部分が産卵に好適な場所に思えたので,そちらの様子を見に行くことにしました.

平瀬の方にいくと,そこではオスが水面を飛翔しながら活動をしていました.オスもこの場所にメスが入ってくると確信しているようです.時刻は6:35くらいです.オスはこんなに朝早くから活動をしているんですね.今まで止まって縄張りを活動しているオスの姿ばかりを観察してきましたが,飛びながら縄張りを巡回するのを初めて見ました.その飛び方は独特で,腹部を斜め上に上げで,ホバリングしながら斜め横にスライドしていくような飛び方をするのです.ナゴヤサナエ的な飛び方です.

▲6:35:流れに沿ってホバリングしながらスライドするように飛ぶオナガサナエのオス.

▲カウンター・ストローク(前後の翅を交互に)で翅を動かしているのは,ホバリングしている証である.

▲スライドせず,ほぼ一カ所でホバリングを続けることもある.

▲オスのこのような活動が見られるのは,早朝だけであろうか.程なくこの飛翔は見られなくなった.

オスは2頭いて,ときどき出会うと,ものすごい高速で追飛行動が起きます.このホバリングの間はほとんど止まりません.草陰を気にしながら,岸辺に沿って移動していくのです.きっと産卵しているメスを探しているのでしょう.しばらくしてやっと止まったので,一コマ撮っておきました.

▲飛翔を止めて止まったオス.

これだけオスが飛び回っていたら,メスが来てもすぐにオスに追いかけられて逃げていってしまいそうなので,最初の場所に戻りました.メスとオスはだまし合いをしているような感じで,メスはオスのいないところ,目につかないところへ産卵に入るように見えます.だから草陰や石の影に隠れるような位置で産卵することが多いのだと思います.

さて,元の位置に戻って,岸辺の石に腰を下ろして次を待ちました.6:46,本日2頭目のメスが産卵に入ってきました.

▲6:46:2頭目(観察している中での)のメス・落下する赤い卵が見える.

▲背景の反射光がほとんどないので,トンボだけが白く浮き出たようになってしまう.

まだ朝の川面は暗く,どうしてもストロボのお世話にならないといけません.でも背景が遠く暗い川面ですと,どうしても夜みたいな写真になってしまいます.

この少し前の6:45に,コオニヤンマのオスが入ってきて川面を見張るようになりました.

▲6:52:コオニヤンマのオス.朝日がやっと川面を照らし始めた.

コオニヤンマのオスはさらに入ってきて,追飛行動が見られるようになりました.6:57,次のオナガサナエのメスが産卵にやって来ました.今度のメスは石の影に隠れるようにして産卵をしています.

▲石の影に隠れるような位置で産卵するオナガサナエのメス.3頭目,6:57.

▲石のまわりを離れることなく産卵を終えた.

次のメスは7:10に入ってきました.産卵が集中する時刻がやって来たのでしょうか.今度のメスは流れの中のかなり開けた場所で産卵をしています.このメスはほとんど位置を変えることなく同じ場所で産卵を続けました.

▲7:10:4頭目の産卵メス.これは撮影の最初のコマで,7:10’28″のタイムスタンプ.

▲これは最後の撮影コマでこの後打水して飛び去った.タイムスタンプは7:10’50″なので,22秒間産卵した.

1時間15分ほどで,4頭の産卵メスを観察できました.朝早く来た甲斐があったというものです.でも残念なことに,空には一面に雲がかかり,川面に太陽の光が当たりません.まだまだ写真の露出は十分ではありません.

次の飛来を待っていると,コオニヤンマが私のすぐ隣に止まりました.トンボのオスと人間のオスがトンボのメスを待つ構図です.これ写真にできないのが残念です.その後,オナガサナエのオスが,私のテリトリーに入ってきました.私も産卵メスを待っているので,彼らとはライバルです.例によって,写真を撮ってから,小石を投げて追い払いました.小石は,水しぶきがかかるようにそばに落とすのがコツです.彼らはカエルらしきものには神経を使っていますので,カエルが跳ねたような感じを出せばいちばん効果的です.

▲7:13:私のすぐ横に止まったコオニヤンマのオス.

▲7:29:私のテリトリーに入ってきたオナガサナエのオス.早速小石を投げて出て行ってもらった.

さて,次にメスが産卵にやって来たのは,7:43でした.この個体も流れの中程の開けた場所で産卵をしています.

▲7:43:5頭目のオナガサナエの産卵.撮影位置を変えるまもなくコオニヤンマ産卵の方に移動した.

このメスが産卵しているときに,少し向こうにコオニヤンマのメスが産卵に入ってきました.産卵に来る絶対数はコオニヤンマの方が少ないので,このオナガサナエは途中で記録を止め,コオニヤンマの方へ移動しました.このコオニヤンマは石で囲まれた空間を出入りしながら産卵をしています.この少し前に私のテリトリーに入ってきたコオニヤンマのオスに出て行ってもらってよかったと思いました.

▲7:44:オナガサナエの産卵中にコオニヤンマが産卵に来た.まわりが石で囲まれている場所だ.

▲低く飛んで,打水のポイントやタイミングを見計らっているのだろうか.

▲打水の直後.水面に波紋が見られる.

▲ときどき,石で囲まれた部分から外へ出て飛ぶ.

このコオニヤンマのメスのつくっている卵塊は結構大きく,写真にはっきりと写っていました.何度か打水した後のためか,卵塊に水分が含まれていて丸くなっているのが分かります.そして,打水した瞬間の腹端を見ると,うすいピンク色の物体が腹端に接した水に,流れるように出て行っているのが見えます.

▲腹端に朱色の卵塊が見える.低く飛んでいるがまもなく打水するのだろう.

▲この卵塊はとても大きい.また水を含んでいるようで丸い形をしている.

▲打水の瞬間の腹端.表面張力で腹端に付着した水の中からピンク色の卵塊らしきものが広がっている(矢印).

このコオニヤンマの産卵は,ほぼ最初から最後まで記録できました.そこで産卵の継続時間を調べてみますと,7:44’06″に最初のコマが撮影され,7:46’06″に最後のコマの撮影が終わっていますので,最初のロスタイムを入れても,2分あまりということになります.

忙しくなってきました.コオニヤンマの産卵が終わるやいなや,7:46’12”に,次のオナガサナエのメスが産卵に入りました.撮影中はもうこれが何頭目にのメスか分からなくなってきました.そう,6頭目の産卵です.そしてこのメスの産卵が終わると,次は7:52に7頭目が産卵に入ってきました.この産卵が1分ほどで終わりますと,次は7:54に8頭目のメスが産卵に入りました.少し向こうの方だったので立って歩き始めると,向こうからこちらへやって来て,私の股の下で産卵を始めました.ヒトを隠れ蓑にしようという魂胆です.

▲7:46:6頭目のオナガサナエメスの産卵.

▲7:52:7頭目のオナガサナエメスの産卵.

▲7:54:8頭目のオナガサナエのメスの産卵.股の下で産卵したため直上からの撮影となった.

撮った写真を見る暇もないほどです.これで終わったわけではありません.7:58には9頭目のメスが産卵にやって来ました.続いて8:01に10頭目のメスが入ってきました.7:43に入った5頭目のメスから数えると,8:01までの18分間に6頭のメスが次々に産卵に入ってきたことになります.平均3分に1回の割合で産卵に訪れ,1回あたり1分前後産卵していますから,コオニヤンマも入れると,10分近く産卵を見続けていたことになります.これほど濃いと,トンボ観察も楽しくなります.

▲7:58:9頭目のメス.開けた場所で悠々と産卵をしていた..

▲7:58:じっと同じ場所でホバリングをしながら産卵を続けている.

▲8:01:10頭目の産卵.9頭目よりやや岸辺に近いところで産卵を続けた.

▲8:01:ここまで本当に息つく間もないほどの産卵ショウであった.

空は一向に太陽が顔を出さず雲の中,オナガサナエを撮りに来るこの時期は,なぜか夏の朝雲りなのです.朝日に当たったオナガサナエの写真というのは意外と撮れません.

さて,この産卵ラッシュの後,しばらく産卵が途切れました.次に産卵に来たのは8:22でした.このメスは,3頭目のメスと同じ石のそばで産卵しています.たくさんの産卵を見ていると,産卵ポイントはでたらめではなく,どうやら好みがあるようです.多少ずれはしますが,大雑把に言って,似たような場所で産卵する傾向が強いです.

▲8:22:11頭目のオナガサナエメスの産卵.3頭目と同じ石の横で産卵している.

▲卵が腹端に付着している.

この観察の後も8:45くらいまで次を待ちました.でも産卵が途切れたようなので,予定の9:00を少し前にしてこのポイントを離れ,流れの別の場所を探索することにしました.ほかのトンボの様子も見ておこうというわけです.

川にかかっている橋桁のところに水が滞留していて止水状態になってました.そこに,モノサシトンボがタンデム状態で飛んでいました.これを記録し,産卵を待ちましたが,意外と神経質なようで,じれったくなって産卵はまたの機会にしました.

▲上3枚.タンデムで飛び回るモノサシトンボのペア.

▲やがてこうやって止まるものの,オスは直立せず,産卵を始める気配がない.

ということで,わずか3時間ほどの観察でしたが,まだ気温は30度を超えていませんし,涼しいなかで,たくさんのオナガサナエやコオニヤンマを見られて,充実した観察でした.また機会があれば,朝絶対に晴れるときに来てみたいです.

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