No.612. ムスジイトトンボの潜水産卵.2018.7.15.

今日は予定としては先週末に見に行くつもりにしていた,ミナミヤンマを見に四国へ行って来ました.ミナミヤンマは急峻な山の源流域が一気に海に流れ込むような環境に生息しています.先週の長期豪雨の影響が,源流域にどんな影響を与えているか見てみたかったのです.行ってみると,何のことはない,苔むした岩石はほとんど動いていない状態でした.昨日兵庫県の山へヒメサナエを見に行ったときは,河床の石がひっくり返り流されて,岸壁は侵食され,やたら白っぽい川に変わっていました.出た水の量はむしろ四国の方が多かったと思うのですが,ミナミヤンマの生息するような場所は,もともと大水が出やすい環境なのでしょうか,河岸が侵食もされていないのに驚きました.

ミナミヤンマは6回現れました.オスが3回,メスが3回,そのうち,2回が,私が産卵しそうだと思っているポイントに入って,くるくる低空を旋回しました.でも結局産卵に至らず,1枚も記録は撮れませんでした.メスは,前回の観察と同じ,ちょうど9時に入ってくるので驚きです.後の時間帯には,オスが通り過ぎるだけ.試しに今日は午後にも待ってみましたら,15時過ぎにもくるくる旋回する動きが観察されました.ちょっと涼しい時間帯に入る感じでした.ミナミヤンマはダメでしたが,シコクトゲオトンボがいたのでそれを紹介しておきます.ただ,こちらもほとんど終わりに近い時期のような感じがしました.個体数がとても少なく,メスを見つけることはできませんでした.

▲シコクトゲオトンボのオス.今日は非常に個体数が少なかった.シーズンの終わり?.

ということで,今日はそれ以外のトンボたちの紹介です.いちばん暑い昼下がりに訪れた池で,ムスジイトトンボがたくさん集まっていて,タンデムで飛んでいました.その日いたトンボを観察中心に据えるという鉄則で,今日はムスジイトトンボをゆっくりと観察することにしました.ところが,ペアはたくさんいるのに,あまり産卵姿勢が見られませんし,岸辺からやや離れたところばかりを飛び回っていました.なんとなく以前のルリイトトンボの観察のときのようです.まあ,それでもときどき岸近くにペアがやって来るので,それを記録に撮っておきました.

▲岸から離れたところを飛び回るムスジイトトンボのペア.

▲ムスジイトトンボのペアと,オスの静止.

▲岸近くにやって来て止まるときもあるのだが,まったく産卵動作を見せない.

▲ムスジイトトンボのメスは,黄褐色の胸部と腹部側面のコバルト色が独特で,私の好きなトンボの一つ.

よく見ていると,産卵姿勢を示したペアが,するすると潜水していくのが観察されました.水面で産卵姿勢を取っているペアが見られなかったのは,産卵動作を始めるとすぐに潜水しているからだと分かりました.また,岸から離れた所に集まっているのも,潜水するためにやや深いところがいいからだと理解できました.

▲産卵姿勢を示すのは決まって岸から離れた場所.深く潜ることができる植物があるところなのだ.

▲なんとか撮影できる距離で潜水をしてくれたペア.メスの方からオスを引きずり込む感じであった.

▲あっという間に潜水してしまった.ムスジイトトンボの潜水産卵.

▲上と同じペアだが,かなり深く潜った.

遠くを飛んでいるムスジイトトンボのペアは,ときどき水面上に止まります.これには2つの意味があるようです.一つは,シオカラトンボなどの急襲を避けるため,もう一つは,なんと,「水面下」にある産卵基質に「水面上」から潜ろうとしている「ように見えた」のです.

▲シオカラトンボの急襲を受け,ポタリと落ちるようにして水面に止まった(浮いた?)ペア.

▲植物が水面に出ていない(わずかに出ているのかもしれないが)ようなところでよく水面上に止まる.

ムスジイトトンボは兵庫県にももちろん分布しています.でもさすが南国です.こんなに群れているのは久しぶりに見ることができました.兵庫県のため池は,外来生物のためでしょうか,最近沈水植物が繁茂するところが少なくなり,もしムスジイトトンボが潜水産卵を好むトンボだとすれば,沈水植物の減少が最近のムスジイトトンボの減少と結びついていると考えることができます.たしかに,10年くらい前,ムスジイトトンボが数百頭いた池は,コカナダもが池いっぱいに繁茂しているところでした.時に県外に出てトンボを観察することで,県内の事情が分かるということかもしれません.

▲ムスジイトトンボのオス.セスジイトトンボやオオイトトンボとは水色が微妙に違う.

さて,この池には,夏のトンボたちが集まっていましたのでそれを紹介しておきましょう.まずはアオモンイトトンボ.こちらも,午後の産卵をあちこちでやっていました.こちらは岸辺近くばかりだったのが対照的です.午後なのに交尾態もいました.

▲アオモンイトトンボのオス.ムスジイトトンボと同じくらいたくさん飛んでいた.

▲アオモンイトトンボのメスの産卵.午後は彼らの産卵の時間帯.

▲器用に腹部を丸めて植物の茎の裏側に産卵する.

▲アオモンイトトンボの交尾は午前中が多いが,産卵時間帯にも交尾しているのだ.

次はタイワンウチワヤンマ,もうたくさん池に出て飛びまわっていました.兵庫県ではこれからです.オオヤマトンボも元気に飛んでいましたし,最近北上が騒がれているベニトンボのメスも岸から少し離れた草むらに止まっていました.残念ながら紅色のオスは見られませんでした.その他では,ショウジョウトンボ,コシアキトンボ,シオカラトンボなど夏の定番トンボたちが活発に活動をしていました.

▲タイワンウチワヤンマのオス.ここはもう完全に南国の夏という感じ.

▲遠くを飛ぶオオヤマトンボのオス.このカメラはオートフォーカスがよく効く.

▲ベニトンボの成熟したメス.30℃超えの暑さの中,日陰に入らず腹部挙上姿勢で日向で頑張る.

この池での観察を終えてから,夕方,マルタンヤンマを見に行くことにしました.マルタンヤンマは夕方近くに産卵に降りてくるので,その時刻を狙ったわけです.ねらい通りマルタンヤンマがカンガレイの間に産卵に降りてきましたが,非常に敏感で,近づくとすぐに飛び出してしまいます.ガサガサ音がするから余計でしょうね.何度か試みましたけれども,一向にらちがあかないので,降りてきたところを強引に記録することにしました.目の前を飛んでも産卵開始を待って結局写真にならなかったミナミヤンマのことを思い出したからです.

▲カンガレイの隙間にもぐり込んで産卵ポイントを探すマルタンヤンマのメス.

▲人の気配を感じると,さっと飛び上がって,しばらくホバリングをする.

▲このように,マルタンヤンマのメスはカンガレイの間に深く入り込んで産卵をしている.

▲ゆっくりと近づいても,2mくらい手前でそれを感じ取り,さっと飛び上がる.

▲飛び上がると,そのまま一気に山の方へ飛び去ってしまう.マルタンヤンマは写真には撮りづらい相手だ.

結果ではありますが,こういう記録もまた面白いと感じました.あまり産卵産卵とこだわらないで気楽にカメラを向ける方が,トンボの生態の別の側面を記録することができるように感じた次第です.まあ今日は軽い気持ちでカメラ片手にドライブしたといったところです.ムスジイトトンボをたくさん見たのが収穫でした.最後に今日のゲスト.夏はいろいろな昆虫に出会える季節です.スジクワガタ?でしょうか,体長2cmほどの小さなクワガタのオス・メスです.

▲体長2cmほどの小さなクワガタが樹液を吸いにやって来ていた..

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