No. 585. ダビドサナエのロケハンで….2018.5.16.

今日はあいにくの曇り空.しかも午前中所用があって,フォールドに出ることができたのは午後から.まあ,気温がそれなりにあったのと,ときどき薄日が差すときがあったりしたので,今日はダビドサナエの産卵観察地のロケハンに行くことにしました.

▲今日ロケハンしたところ.河川の中流域で,樹林が隣接している環境.

ホンサナエの時に書きましたが,今までのトンボ観察で,どういうわけかまだ観察,あるいは記録が取れていない種というのが,いくつかあるのです.一つはなかなかお目にかかれないことが原因の種です.でももう一つは,普通に見られるトンボなので,後回しの連続で,結局今日まで記録がないものです.ダビドサナエは後者に入ります.産卵を見ないわけではないのですが,絶対に仕留めるといった強固な決意のもとでの観察をしたことがないまま,今日に至っています.今年はこれをなんとかしたいと考えています.掲示板「神戸のトンボ広場」によく投稿される「権兵衛」さんが,川の中流あたりに多いと書いてくれましたので,今日はその中流あたりを狙ってみました.それが上の写真の場所です.

▲曇りであったが,流れに石に止まるダビドサナエのオスがいた.

▲私が産卵に来るかもしれないと踏んだ環境の所にきっちりとオスが降りてきて止まった.

ご覧の通りダビドサナエはいました.サナエトンボは曇りの日はよくないので,姿が少なくても仕方ありません.でもこれ以外にも数頭見ていますので,この場所は結構数はいると思いました.写真のオスは十分成熟しており,産卵は期待できる時期のようです.ダビドサナエについてはこれ以上の成果はありませんでした.しかしこの場所,ニホンカワトンボとミヤマカワトンボがたくさん飛んでいました.「権兵衛」さんも,ニホンカワトンボがたくさんいると書いていましたので,ぴったりかもしれません.産卵に来そうな微小環境もあちこちにありました.上の下側のオスは,その場所に陣取っていたものです.

▲足下をぐるぐるとミヤマカワトンボのオスが飛び回っていた.活動は活発である.

さて,そこにたくさんいるトンボを観察対象にするべき,という鉄則に従って,ミヤマカワトンボとニホンカワトンボの観察をしました.ここにはミヤマカワトンボが産卵しそうな雰囲気も十分あります.ただ,今日はメスの姿が少なかったようで産卵は見られませんでした.でも,オス同士の絡み合いで面白いものを見ました.通常オス同士であれば,追飛行動など,闘争が起きるものです.ところが,目の前で絡み合っていた2頭のオスのうち1頭が,どういうわけか他方をメスと勘違いしたらしく,しきりに腹部先端を上に曲げで求愛行動を取るのです.

▲腹部先端を丸めて上に上げ,腹面の白い色を目立つように,本来ならメスに見せ,刺激する.

そうすると,もう1頭のオスもそれに反応して,そのオスのまわりをホバリングして飛び続けるのです.オス同士の疑似繁殖行動,これもなかなか見られるものではありません.これらのオスは,しばらく後には,一般のオスと同じように川面の広い範囲を追飛して飛び回ることばかりやっていましたから,このときだけ勘違いしていたのだと思います.

▲一方のオスの求愛ディスプレイに反応して,もう一方のオスが,しきりにそのまわりを飛び回る.

そして,ここでもう一つ面白いものを見ました.ミヤマカワトンボの求愛のディスプレイは,アオハダトンボほど洗練され特殊化したものではないものの,それなりにメスを刺激する行動をとります.そんな中,今までアオハダトンボでしか見たことのない,水面に浮かぶディスプレイを見たのです.アオハダトンボほど大きくは流れませんが,少しは流されました.腹部先端を上に上げ,翅を少し開き気味にして水面に浮かんで流されるディスプレイで,形はアオハダトンボに似ています.ただ,今回は相手はオスですけど.

▲腹部先端部を見せ,浮かぶオスのまわりを,もう一方のオスが飛ぶ.

▲ちょっとピントが甘いが,浮かんでいることは認識できるであろう.

▲上2枚とは違う位置での「浮かぶディスプレイ」.ここで,少しだけ流された.

下の写真は,アオハダトンボの「浮かぶディスプレイ」です.比較すると,翅の位置,脚の位置,腹部先端の曲げ方など,姿勢がよく似ているのが分かります.

▲アオハダトンボの「浮かぶディスプレイ」.2013.6.30.撮影.

さて,もう一種数が多かったのがニホンカワトンボでした.これは先日神戸市内で観察しました.今日は産卵個体数が多かったので,特に「警護産卵」をテーマにして記録を撮ることにしました.

オスは流れの枯れ木に止まって,縄張りを形成しています.そしてときどき飛んで,周辺を見回ります.

▲縄張りを形成しているオス.産卵基質(資源)の上に陣取って,メスを待つ.

▲ときどき飛び立って周辺をパトロールする.

メスが縄張りに入ってくると,たいがいはタンデムになり,交尾のために止まる場所を探して,タンデム状態で飛び回ります.ただここのメス,結構逃げるのがうまくて,オスが見失うことも多く,タンデムに至らないケースが結構ありました.

▲メスが入ってきて,うまく捕まえることができると,タンデムになって交尾場所を探し飛び回る.

止まる場所が見つかると,すぐに移精行動を始め,その後交尾に至ります.交尾時間は長くありません.2,3分で終わってしまいます.

▲止まったらすぐに移精行動に移る.

▲移精行動が終わればそのまま交尾が開始される.

交尾が終わると産卵を始めるのですが,メスはすぐに始めないことが結構あって,オスに促されるか,しばらくして産卵に入る感じです.オスはそれまで待っているようです.ニホンカワトンボの産卵警護は,少し離れた,見通しのいい位置から行われることが多いようです.下の写真はこの縄張りオスとは違うペアです.このように離れているケースが多いように見受けられます.

▲ニホンカワトンボの産卵警護をするオスは,少し離れたところから見ていることが多いように思う.

ところが,この縄張りオスは,ありがたいことに,かなりメスに近い距離でオスが警護していました.ただ,メスも少しずつ移動しながら産卵しているので,だんだんと距離が遠くなっていきました.ところで,以下の写真を見て感じたのですが,メスの体色は,背景の川の水を通して見える底の色とよく似ていて,一種の保護色になっているように感じました.写真はストロボが当たっているのでメスの体は光って見えますが,そうでなければ発見は結構難しく,産卵個体をよく見逃すのもそのせいかもしれません.

▲かなり近くで産卵警護するオス.

▲上の写真の別アングル.空が反射して見にくい.メスの色が,水の底の石の色とよく似て同化している.

▲だんだんと離れた位置で産卵するようになった.

▲上の写真の産卵するメス.

さて,産卵はまだまだ続きそうなので,ほかのメスの産卵活動を見に行くことにしました.ニホンカワトンボは朽木に産卵するのが好きなのですが,今日は生きた植物組織に産卵している個体を見ました.それも,途中からダブル産卵でした.この植物,コケの一種だと思います.コケの下側は土のかたまりで,葉を貫いて土中に産卵しているかもしれません.

▲朽木に産卵することが多いニホンカワトンボだが,植物の葉の表面に産卵している.

▲もう1頭が産卵に参加し,ダブル産卵となった.

▲小さな小さな枯れ木に産卵するメス.

といったところで,ダビドサナエの産卵(ついでにミヤマカワトンボの観察)は次回にして,今日のロケハンはこれで終了することにしました.時刻は16:15でした.

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