No.550. トンボ ア・ラ・カルト.2017.5.28.

チャンスは徹底的にの格言のもと,今日はもう一度ホンサナエをねらいに行きました.今日のタイトルは「続・ホンサナエの観察」になる予定でした.でも….

今日のデータ放送の予報では7時台に晴れマークになり,以降ずっと晴れ.ということで早朝の産卵メスをねらいに,朝起きてすぐ出かけ,現地に7:30頃に着きました.しかし,予報は外れ.空はどんよりとした曇り.最近天気予報が,1時間単位というその予報精度とは裏腹に的中精度が低いように感じます.

▲朝7:52の空模様.天気予報を恨めしく思ったが,このあと30分ほどで劇的に青空に変わったのだ.

これではサナエトンボは出てきません.仕方なく車の中で仮眠.20分ほどしたら西の方から雲が切れて青空が見え始めました.よしよし,ということで出動開始.しかしホンサナエは全く出てきていません.まあ,もう少し日差しが強くなれば出てくると信じ,早朝にしか見られないモートンイトトンボの交尾観察をすることにしました.5月中にモートンイトトンボを見に行ったことはないので,まだ早いかとも思いましたが,いやはや何の,草の間からたくさん交尾態が飛び出してきました.

▲モートンイトトンボの交尾・交尾・交尾.

ということでこれに味を占め,今日は,お好みトンボを観察することにしました.そこで,タイトルも,「トンボ ア・ラ・カルト」.ア・ラ・カルトというのは,好みの料理を注文しながら食べることだそうですが,きょうは,まさにお好みのトンボをつまみ食いしながらの観察ということです.

さて,歩いてモートンイトトンボの湿地へ行く途中,ニホンカワトンボが横を通り過ぎました.今年は全くカワトンボを見に行っていませんので,ちょっとつまみ食いしました.

▲老熟し,肢もちぎれているニホンカワトンボのオスの戦士(と言ったところか).

モートンイトトンボと遊んでいるうちに,空は広く青空になり,日差しも強くなってきました.本命のホンサナエのメスの探索です.が,先週あれほどいたホンサナエが全く飛びません.天気は問題なしの状態になっています.仕方がないのでキイロサナエの羽化が見られないか,探してみることにしました.そう,いたんですね.2個体見つけました.

▲キイロサナエの羽化.キイロサナエは5月下旬から6月初めにかけて羽化するが,これはここでも兵庫県南部でも同じようである.

また,オスの方の処女飛行後の静止,またメスの未熟な個体が突然目の前に出てきたりもしました.こちらは羽化不全で翅が痛んでいました.キイロサナエのメスは結構こういう個体がいるのですね.

▲上の直立静止状態の個体が処女飛行で止まったもの.

▲キイロサナエの未熟個体.羽化不全で飛び方も弱弱しかった.

そうこうしているうちに,1頭だけホンサナエのオスが川面を飛ぶのを見ることができました.いくら待っても,これ1頭だけしか飛びません.運よく川の土手に飛んできたのを撮影することができました.この地のホンサナエの最盛期は5月の上旬なのでしょうか? 来年の課題になりそうです.

▲今日唯一見かけたホンサナエのオス.

今日は10時までがホンサナエの観察予定です.午後は,今シーズン最後になるであろう,源流域のサナエトンボ観察です.

源流域の観察地には11:30頃に到着しました.空が晴れていて,林床には木漏れ日が射しこんでいます.着くや否や,小さなサナエトンボが飛び交っていました.やはり晴れた日のお昼頃は活動が活発です.クロサナエとヒメクロサナエが混じっていましたので,別々にまとめておきましょう.まず,クロサナエの方から.例によって,オスは時々降りてきてはすぐに飛び去ります.

▲クロサナエのオスたち.本当に短時間降りてきて止まる.驚かしても飛び去り,なかなか敏感だ.

メスも産卵に入ってきました.今日は3回,時刻は12:10,14:02,14:42でした.このうち,14:02のを紹介しましょう.

▲岩に生えた植物の間で産卵するクロサナエのメス.上の矢印は落下する卵.

▲途中と最後にこのように止まって体を休めている.冷えるのだろうか,それとも疲れ?.

このときは空が曇っていて,少し肌寒いせいか,産卵途中,また最後にも静止しました.クロサナエは,午前から午後にかけて,特定の時間に集中することもなくだらだらと産卵に来るみたいです.

午後にここを選んだのは,ヒメクロサナエが午後に産卵することが多いからです.オスは活発に活動していて,産卵しそうな場所によく降りてきて止まります.

▲典型的な産卵微小環境.矢印の石の上に舞い降りて来るオスが多かった.オスはよく知っていると感じた.

また,産卵場所にかかわらず,と言っていいのでしょうか?,木漏れ日の射している葉の上や地面にもよく止まります.この,地面の上というのが,今日の興味深い観察につながりました.

▲私が長靴で踏み固めた木漏れ日の射す地面の上に止まっているヒメクロサナエのオス.この後のメスはここに来たのだ.

▲流れの石の上や,シダの葉上にもよく止まる.

オスたちは間違いなくメスを探しているようです.オスがオスに飛びかかるのを観察しました.オスの上にオスが乗って…,さすがに交尾をしようとはしませんでしたが,とにかく捕まえてから確かめるという感じです.

▲オスがオスの上に乗った.多分メスだと思って飛びついたのだろう.

ヒメクロサナエの産卵は,結論から言うと見ることができませんでした.しかしながら,メスは産卵にはやってきました.典型的と思われる産卵場所ではなく,「地面の上」に産卵行動を示したのです.それも3回!.同じ場所に!.最初は13:46.地面の上を行き来するメスを見つけたのです.こんなところに産卵に来るはずはないので,クロサナエかと思いました.すると突然地面に止まって,産卵行動を示したのです.腹端で産卵基質を調べるような動作です.2回ほど腹端を泥に当てて飛び去りました.

▲13:46に産卵行動をしたヒメクロサナエのメス.私の長靴の足跡なのが分かるだろうか.

その後にもまたやってきて,2回ほど腹端を地面に当てて産卵基質を確かめるような動作をしました.これは短時間だったので記録ができませんでした.そして15:00ちょうどに,3頭目がやってきました.斑紋を比べると13:46の個体とは異なる個体であることが分かります.

▲腹部側面の淡色斑紋の比較.13:46の個体と15:00の個体は明らかに別個体である.

この15:00の個体は,かなり長時間,あちこち移動しながら気に入る産卵基質を調べ続けました.この「地面」の場所は,私が長靴で踏みしめたところで,水から上がった時に長靴についていた水分が付着し,湿土状になっているのです.

▲あちこち移動して産卵行動を取る15:00のメス.

卵を排出していないかどうか写真を丹念に調べましたが,それはなかったようです.

▲15:00のメスの腹部先端の拡大写真.泥がついているが,ピンク色の卵は見当たらない.

でも,異なる複数の個体が,このような通常の産卵場所ではない水から20cmほど離れた「陸上」の地面に産卵しようとするなんて,..,彼らが産卵場所を識別するサインが何なのか,興味がもたれます.水のほとんどない泥などがいいのでしょうか? 典型的な産卵場所は,今年は皆それなりに水に浸かっていますので,避けているのでしょうか? なかなか興味深い示唆を与えてくれる観察だったように思います.でも,生息場所をこのように踏み荒らすと,ヒメクロサナエの無駄な産卵が増えることになるのかなぁ? 

ということで,今日は15:30に観察を終えました.

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