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神戸のトンボたち 2
六甲山地のトンボ
−寒地性・源流性のトンボの宝庫−

 表六甲の河川は急な流れが多く,標高の高い所から一気に流れ下り市街地に入るものがほとんどです.したがって,河川の環境として,ゆるやかに流れる中流というものが存在しません.しかし水源が山の高いところにあり,瀬戸内海国立公園内でもあるので,源流から上流の水質は現在は清浄です.

 六甲山は花こう岩でできていますが,世界的にも有名なほど風化が進んでいて,その岩質はもろいことで有名です.浸食作用も起きやすく,水害,山崩れも過去に大きなものが記録されています.そのため河川の上流〜源流の底質は不安定で,植生も貧弱です.

 阪神大水害以後,防災のために数多く設けられた砂防ダムにできた水たまりや湿地は,新しいトンボの生息環境として数々の種の定着を可能にしています.一方池は六甲山頂一帯にいくつかの池も点在していて,ヒルムシロなど寒冷地を好む植生が発達し,これらもまたトンボの生息場所を提供しています.

 したがって六甲山地では,源流から上流に生息するトンボを中心に,一部寒冷地の池沼にすむトンボなどが見られるといった特徴があります.

 六甲山地にしか見られないトンボとして,ムカシトンボヒメクロサナエがあります.これらはいずれも河川の源流を好むトンボです.いずれも750mほどの標高にいて,丹生山地にいる可能性は低いかもしれません.それ以外のトンボでは,河川上流を生息場所とする,カワトンボミヤマカワトンボダビドサナエヤマサナエコオニヤンマミルンヤンマコシボソヤンマなどのトンボが見られます.またハイキングコースなどに沿った細流にはオニヤンマが飛び交っています.


 六甲山に点在する池沼にはクロスジギンヤンマオオルリボシヤンマタカネトンボなどがすみついています.ルリボシヤンマは一部の池沼では毎年姿が見られますが,少数の個体はあちこちの池沼を探しながら,転々と生活場所を変えているようです.タベサナエは,六甲山地の西部,山田町および藍那 (あいな) から白川にかけて分布するのが特徴です.所々にできた樹林に囲まれたわき水による水たまりには,ヤブヤンマがひっそりと暮らしています.

 1990年代の前半頃までは,六甲山や摩耶山に,夏の暑い盛りにアキアカネがたくさん避暑に登ってきているのが観察できたのですが,1990年代後半は,その姿がほとんど見られなくなってしまいました.理由はよくわかっていません.その他,ネキトンボキトンボが見られる池もあります.ミヤマアカネは1960年代には裏六甲一帯でたくさんの記録があったのですが,現在はほとんど壊滅(かいめつ)状態で,非常に発見が困難になってしまいました.

(次ページへ続く)
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