H071.マダラナニワトンボ Sympetrum maculatum 連結打空産卵
観察地の風景
▲クログワイなどが繁茂した湿地状の池.この池はもうかなり以前に改修されてしまった.
 兵庫県内の生息環境は湿地状の岸辺が広がるため池である.上の写真の池も改修され,この池では現在はマダラナニワトンボは見られなくなった.ここに限らずマダラナニワトンボはもう兵庫県内ではほとんど目にすることはない.ベッコウトンボが見られなくなってから久しいが,マダラナニワトンボもそうなる日は近いと思われる.在りし日の10月の観察記録をまとめてみた.

 朝早く生息地を訪れると,マダラナニワトンボはまだ高い木の上に止まって休んでいる.幸い止まっている木の枝近くに登ることができたので,間近で写真を撮ったが,ほとんど動じる様子もなかった.まだ生殖活動を始める前の時間帯である.
高い木のてっぺんに止まるオス
▲高い木のてっぺんに止まるオス.生殖活動を始める前にはこういったところに止まっている.
 10:30を過ぎるころになると,池岸の湿地状のところにオスがぽつぽつと姿を現し始める.滑空するようにオスは湿地の上や少し岸に上がった草地の上を飛び回る.ホバリングすることも多い.オスはおそらくメスを待っているのだろうが,メスを捕まえる瞬間はあまり見たことがない.たいがいタンデム状態で産卵場にやってくるので,オスはメスを産卵場以外で見つけている可能性がある.ということは,産卵場に単独でやってきているオスは,すでにあぶれてしまったオスなのだろうか?
繁殖活動の始まり
▲繁殖活動の始まり.オスは湿地状の岸にやってきて,滑空したり止まったりしている.
 さて,時刻が11:00を過ぎるころになると,どこからともなくカップルが産卵場に入ってきて産卵を始める.軽い上下動をともなって,水のない草地の上で産卵する.だいたい打空産卵をするトンボは,水のないところに卵を落とす.これはそういったところへ産卵することを可能にするための進化の結果であろう.
連結を解いて単独産卵に移行するメス
▲連結打空産卵.右上の写真では,卵が放出されているのが分かる.
 産卵するカップルは,追いかけると遠ざかっていく.じっと近づくのを待つのが実はベストである.向こうからやってくると,カメラの10cm先でも平気で産卵をする.
少し下側や横から見た産卵
▲少し下側や横から見た産卵.上の写真ではやはり卵が落ちているのが分かる.
 11:00から12:00くらいまでが産卵のピークで,ほぼ一斉に始まり一斉に終わるのが特徴的である.以前小野市の大産地では,何十というカップルが上下動をしながら産卵する様はすごかった.ここの小さな産地では2,3ペアがやっとというところであった.
産卵しているカップルのメスの背中にアオイトトンボが止まった瞬間
▲上右の写真は産卵しているカップルのメスの背中にアオイトトンボが止まった瞬間.
 午後になると,時々産卵にやってくるカップルはあるものの,生息地では明らかに産卵が終わったという感じになる.