H072.ナニワトンボ Sympetrum gracile 連結打空産卵
観察地の風景
▲まだ残暑が厳しい9月の中旬,樹林が隣接した木陰のある水落しをされたため池.
 ナニワトンボはリスアカネと同じような環境に生息する.逆は成り立たないが,ナニワトンボの集まる池にはだいたいリスアカネも集まってくる.上の写真はリスアカネの観察記録のページと全く同じ写真である.同じ場所で同じ日に両者が観察できる.もう,写真のキャプションも同じにしておいた.
池の岸の樹陰でメスを待つオス
▲池の岸の樹陰でメスを待つオス.これは別の日に別の池で撮影したもの.
 普通は9月上旬ころからナニワトンボの産卵活動を観察することができる.まだツクツクボウシの鳴き声がやかましいころである.オスは,上の写真のような場所を選んで日陰に止まっており,メスの訪れを待つ.
落ち葉や枯れ木が産卵しているような水落された池岸に産卵に訪れる
▲落ち葉や枯れ木が産卵しているような水落された池岸に産卵に訪れる.
 メスは,隣接する樹林の間から突然舞い降りるようにして池に入る.オスはそれを見つけてタンデムになり交尾に至る.交尾は少し離れて明るいところで行われたりする.他のオスの干渉を避けているようだ.その後,連結状態で,産卵を始める.上の写真のように,水が落とされた岸の上の低いところで,連結打空産卵を行う.主に石や枯れ葉・枯れ枝などが散乱しているところに卵をばらまく.打空産卵をする種は,ナツアカネ,ノシメトンボ,リスアカネなど,すべてこういった水のないところに産卵をする.
次々と産卵にやってくるカップル
▲次々と産卵にやってくるカップル.
 数の多い生息地を訪れると,次々と産卵にやってくる.リスアカネと混じって産卵している.メスは体の斑紋がリスアカネとそっくりである.時々,ナニワトンボがリスアカネのメスを連結して産卵している姿を見る.
産卵の後半に,オスはメスを放し,メスが単独産卵に移行する場合がある.
▲産卵の後半に,オスはメスを放し,メスが単独産卵に移行する場合がある.
 産卵の後半になると,リスアカネと同様に,オスはメスを放し,メスが単独で打空産卵を行うことがある.時々,オスがメスの訪れに気づかず,メスが最初から最後まで単独産卵を行って帰ってしまうこともある.多くのアカネ属のトンボが連結産卵をするが,これはオスの要求によるものであろう.
リスアカネとナニワトンボはそっくり
▲リスアカネとナニワトンボはそっくり.左:リスアカネのメス,右:ナニワトンボのメス.
 先に書いたが,ナニワトンボとリスアカネは本当によく似ている.もちろんオスについては色やサイズは大きく違っているけれども,メスについては,並べてみると,そっくりであることが理解されるであろう.生態的には本当にそっくりな2種である.これは同じような環境に生息してきたための収斂現象なのだろうか,はたまた起源が同じ種なのだろうか,非常に興味深いところである.