H078.コノシメトンボ Sympetrum baccha matutinum 挿水?産卵
観察地の風景
▲浅い水たまりにキクモなどの水生植物が生えている.
 コノシメトンボは学校のプールをはじめ,広く開水面が広がった池や水たまりに訪れる.どちらかといえば生産性の低い貧栄養の池を好むように感じる.完全に干上がっていた池に雨が降って水がたまった後,そこに集結して産卵したりする.この日は研究会の調査会でこの池を訪れた.9月末のよく貼れた日の10:00前である.他のアカネ属に比べると,日当たりのよい池で産卵するせいか,生殖活動が始まるのが早い.
キクモがまばらに生えている間を飛んで打水産卵する
▲キクモがまばらに生えている間を飛んで打水産卵する.
 コノシメトンボはどこで交尾しているのだろうか.おそらく近くの林縁などでカップルが誕生しているものと思われる.池には連結したペアが入り込んでくる.タンデムになっていないオスは水面をホバリングしながら探索飛翔をしているが,池で交尾態になるのを見かけることは少ないような気がする.時々メスが単独で産卵しているのを見かける.
同じような場所で何度も打水する
▲同じような場所で何度も打水する.波紋が水面にいくつかできているのが分かる(上).
 また打水時には見かけより深く腹部を水中に突っ込んでいる(下).
 コノシメトンボは,あまり激しく移動せず,チョンチョンと同じような場所で打水する.打水後もあまり高く飛び上がらない.オオクチバスなどがいれば格好の餌になるのであろうが,コノシメトンボは生物相の貧弱な生産力の低い池によく訪れるので,そういった池には魚もいなくて心配ないのであろう.そういう意味では肉食性外来魚の侵入に対し影響を受けにくい特質である.だからあまり数の減少を感じないのかもしれない.
コノシメトンボの産卵では,打水の瞬間,水がほとんど跳ねない
▲コノシメトンボの産卵では,打水の瞬間,水がほとんど跳ねない.
 中左:着水の瞬間.静かに垂直に水中に腹端が入っていくような感じである.
 中右:離水の瞬間.水面にはきれいな同心円の波紋ができる.
 下:腹端が垂直に水中に挿入されている.いわば「挿水産卵」である.
 コノシメトンボが打水した瞬間というのは,水がほとんど跳ねない.写真で見て分かるように腹端が垂直に水に入っているからだろう.シオカラトンボなどが行っている,いわゆる飛水産卵とは全然違った産卵方法である.打水というよりは挿水産卵という感じである.こういった微妙な違いが,産卵の見かけ上の印象の違いにつながっているのだろう.
水際の泥に腹端を打ちつけるような産卵をするカップル
▲水際の泥に腹端を打ちつけるような産卵をするカップル(別の日).
 コノシメトンボはいろいろなところに腹端を打ちつける.何もない水面に打ちつけることが多い.しかし,水際の泥面に打ちつけるような産卵方法もよく採用している.こういった産卵方法のどれを選ぶかは,カップルによって傾向があるように感じる.これは,オオキトンボやアキアカネなどでもよく感じることである.遺伝的な変異によってこういった傾向が決められているとするならば,この戦略の多様性は生き残りの確率を高めるであろう.ただ,オスかメスか,どちらがこれを決めているのだろう.
単独産卵
▲単独産卵.腹部先端はしっかりと水中(または泥中?)に垂直に突き刺さっている.
 産卵も後半になると,オスがメスを放し単独産卵に移行することが多くなる.ただ,よく観察していると,オスがメスを放すというより,メスが植物を掴みオスから強引に離れるという感じの離れ方をする場合が多い.単独になったメスはそのまま産卵を続ける.