H025.サラサヤンマ Sarasaechna pryeri オスのなわばり
観察地の風景
▲おそらく昔水田であったところにできた湿地.
 サラサヤンマは湿地の住人である.5月の中旬以降,こういった湿地を訪れると,サラサヤンマが飛んでいる.しかし最近はサラサヤンマが観察できる湿地はめっぽう減ってしまった.かつてはちょっとした休耕田にも姿を現していた.湿地といっても,水がじゅくじゅくした場所,もちろん湿地なのでそういった場所はあって当然だが,サラサヤンマはそういった場所よりも,むしと水が切れたやや乾燥した場所をこのんでなわばりを形成する.
なわばりの典型的な空間
▲サラサヤンマがなわばりを持つ典型的な空間.
 上の写真は,実際にサラサヤンマがなわばりを形成していた場所である.湿地の隅にある,こういった水のない湿土や落ち葉で形成されたくぼ地に好んでなわばりを形成する.これは,トピックスで紹介した豊岡市の観察でも同じであった.湿地の明るいところを飛び回っていることも多いが,注意して観察しないと,これは単に摂食をしているだけの場合がある.もちろんそういったパトロール行動もあるとは思われる.
なわばり上空をパトロール飛翔するオス
▲なわばり上空をパトロール飛翔するオス.
 サラサヤンマの棲息地を訪れると,オスは,音もなくこういったくぼ地の上を飛んでいる.暗いので,撮影には普通はストロボを使用するが,こういった写真の方が現地の実感はある.気をつけないと見過ごしてしまいそうである.特になわばりの縁に静止しているときなどは,熟練者でないと見過ごしてしまうであろう.
静止してなわばりを監視しているオス
▲静止してなわばりを監視しているオス.
 長い時間サラサヤンマのオスとつきあっていると,実際はこのように,止まっている時間の方が長いことが分かる.脅かすと,さっと飛び立って,ホバリングして,どうしようかと考えているような飛び方をする.異常がなければまた止まる.刺激しなければ1時間以上止まり続けることもある.オスは,なわばり空間に背を向けて,なわばりの縁に静止することが多い.したがって,なわばり監視を示す写真は,普通のアングルと違って,背中の方の空間を広く撮るのが正しい.
パトロールするオス.
▲パトロールするオス.ホバリングすることが多い.
 時々,自発的に飛び立って,なわばり上空をパトロール飛翔する.その際ホバリングを交えて飛ぶことが多い.ホバリングは十数秒続くこともあり.初心者には飛翔写真を撮りやすい対象である.ホバリングしているときは,上の下の写真のように,翅を後方から前の方に向けて,前後交互に打ち下ろすような動かし方をする.ホバリングに関してはエゾトンボ類に負けないくらい上手である.
摂食飛翔をするオス
▲摂食飛翔をするオス.
 さて,メスがやってこなければ,オスの一日のお勤めは終わる.日が西に傾くころになると,オスが少しずつ湿地から離れていく.湿地の横の道に出ると,そこで,オスたちがお勤め帰りの摂食飛翔をしている姿にお目にかかることができる.摂食飛翔は,ほとんどホバリングを交えることなく,往復周回飛翔をし,肢も時々伸ばす.こうやって,次の日もまた次の日も,オスはメスを待ち続ける.