H026.コシボソヤンマ Boyeria maclachlani 産卵とパトロール
観察地の風景
▲木漏れ日の射す樹林に囲まれた午後の小川.
 8月の暑い夏の午後,木漏れ日の射す薄暗い小川で,コシボソヤンマのメスたちの産卵活動とオスのパトロール活動を観察した.上の写真にはメスの産卵が写っているのだが,分かるだろうか.コシボソヤンマは,こういった流れの,さらに陰になった薄暗いところで静かに産卵をしているので,横を通り過ぎても気づかないことも多い.
コシボソヤンマの産卵基質
▲上:産卵のための基質は,こういった木の根元や朽ち木が多い.
 下左:上の写真の白矢印のところでメスが産卵している.その部分に寄った写真.
 下右:脅かすとこのように,木の上に逃げてしまって,しばらく降りてこない.
 この日ここを訪れたときも,実は産卵に気づかなかった.ばしゃばしゃ水の音をさせながら歩いたものだから,産卵していたメスが驚いて上の木に逃げてしまった(写真上の下右).「しまった」と思ったけれど後の祭り.しばらく待ったが降りてくる気配がなく,あきらめかけたとき,足元でもう一頭産卵していることに気づいた(写真上の下左).実は産卵場所の写真(上の写真の上)を撮ったとき,このメスには気づいていなかったのだ.
流れの上をパトロールするオス
▲流れの上をパトロールするオス.
 オスは,流れの上をせわしなく往復して,メスを探している.しかし,すぐ横で産卵しているメスに全く気づかない.一体何のためにパトロールしているのやら...
生きた木の根元に産卵するメス
▲生きた木の根元に産卵するメス.
 この,木の根元に産卵しているメスは,まったく撮影している私に動じることなく,せっせと産卵している.はかっただけで1時間30分以上は産卵を続けた.ビデオにあるメスと同じ個体である.写真を撮りビデオを用意して回すのに十分な時間なのだ.同じトンボといっても個性がある.こちらのトンボに夢中になっている間に,先に驚かして逃がしたメスが降りてきて産卵を始めた.
少し細めの朽ち木に産卵するメス.
▲少し細めの朽ち木に産卵するメス.
 こちらの産卵基質は細いせいか,腹部を器用にねじらせて,いろいろな角度に卵を産みつけている.そのうち,体のほとんどが水中に没するまで後退して産卵を続けた.結果的には全身がもぐってしまうことはなかった.こういう産卵場所を見ていると,コンクリート護岸が産卵場所を破壊していることがよく分かる.

 さて,別に日に同じ場所を訪れたが,今度は上の場所では産卵が見られず,少し下流側の支流,そこはコンクリートの三面張りなのだけれども,メスが朽ち木に産卵しているのを見つけた.オスは,そのすぐ横を,行きつ戻りつパトロールしているが,これまたメスを見つけることができない.数十センチまで近づいたこともあったのだが...
暗い三面張りの川をパトロールするオス
▲暗い三面張りの川をパトロールするオス.
 メスは,堰堤から噴き出す水飛沫を浴びながら,堰堤のすぐ下に転がっている朽ち木にせっせと産卵していた.翅も複眼も胸も腹も,水滴がびっしりとついている.夏の暑い午後でなければ体温が下がって飛べなくなるだろうと思う.
水しぶきを浴びながら朽ち木に産卵するメス
▲水しぶきを浴びながら朽ち木に産卵するメス.
 このメスは割合に神経質で,しばらくすると飛び去ってしまった.いつも思うが,大型のヤンマは,こうやってひっそりと目立たないように産卵していることが多い.体が大きくて,鳥たちにねらわれやすいからかもしれない.